絆〜SIN〜最終話『運命という絆』




キラとシンが事実上夫婦となって数か月…


その事を心の底から喜んだレイは
「ギル。シンがキラ=ヤマトと結ばれた。」
「ああ…私の耳にも入ったよ。」
オーブでのシンの回復も含めて、ギルバードは知っていた。
あれだけ手酷く扱ったシンから、定期的に一度は敬愛していた議長にっと、
自身の近況をメールで貰っていた。
それはシンにとっても、レイと議長の復縁を聞きたがっている事なんだと、
ギルバートは察してレイとの事をきちんと向き合っていると伝えた。
「何だか複雑だな。自分から蒔いた種とはいえ、まさかあの二人が…。」


今でもレイはシンの選択が信じられなかった。
アスランが運命の恋敵と思って、それを阻止するためにした事が…
「お前はシンが未だに好きか?」
ギルバードにそう質問されたレイは
「そうだね。きっと深く愛していたと思う。思い通りにならない彼を傷付ける位に。
でももういいんだ。俺がそうやって世界を勝手に狭くしたから、
今でも苦しめている人を知っているから。」
レイはギルバードをしっかり見詰めて
「こんなにギルの傍が暖かいと分かったから。俺にとって此処が居場所なんだ。
誰にも譲れない此処が…」
シンを通して愛し愛される者達の幸福を知った。
何も失恋の慰めにギルを選んだのではなく、レイは自分にとってギルはなんなのか考えた。
父親?お兄さん?そのどれにも当て嵌まっていない。
前はシンを巡っての共犯者だったが、もっとシンを知る前からちゃんと思考を巡らせ、
そうして出た答えが…


「俺はギルと一緒に生きたい。ギルの居ない世界が怖いんだ。」
これがシンがキラにむけた思いと同義語かどうかわからない。
でも恋や愛を通り越して存在する思い。
「レイ。私は愚かだった。シンに諭されたよ。お前を本気で受け止めるというのは、
それに見合う何かが無くてはならないと。しかもとっくに答えが出ているのに、
レイからそれを言ってもらうのを待っている。それでは何も進まない。
だから私から言う。お前を愛していると…。」
ギルバートは長く遠回りしていたと自覚する。
簡単に言える言葉では無いのは確かだが、レイにもっと早くこれを伝えていたら、
レイはもっと早く楽になれたのかもしれない。
唯でさえ情緒面で遅れているレイを、此処まで追い詰めずに済んだのかもしれない。


後悔ばかりが溢れるが、
「お前の気持ちが私の思いに追いつくのを気長に待っている。だから私の恋人になりなさい。」
「本当に俺でいいの?タリアさんがいるじゃない。それにシンも…。」
「これは揺るぎ無い私の決意だ。だから…。」
そう言い終らない先に、レイは自らギルバートの唇にキスをした。
まるでそれが答えと言わんばかりに…
「待っていて。俺もギルが好きだから。もう間違わないから。」
シン…本当にごめん。俺達が弱かったからお前を巻き込んだ。
幸せになる権利なんか無い。お前にした事を思えば…でも
「ずっと俺を離さないで。ギル。」
そう色んな思いが綯交ぜになって涙が伝うレイを、ギルバードは抱き締めて
「ああ。もう貝殻のペンダントはシンとステラのものだ。
しかしいつかお前のこの指に私との指輪(きずな)を与えよう。」
レイのピアノを奏でる細い指に自分の指を絡ませ、ギルバードは約束した。
長く苦しい狂気と言う暗闇から、やっと互いは陽の光に包まれた。


「レイと議長。うまく纏まったみたいだ。良かった。」
いつも懺悔のような内容の連絡ばかりで、心底心配していたシンはキラに報告した。
あんな事があっても、レイは親友であり、嘗ての戦友である。
「本当に君は優しいね。」
「そんな事はないよ。キラが居てくれるからこんな気持ちでいられるんだ。」
そういうシンに嬉しさを隠せないキラだったが…
「メールが来ている。内容はっ?あっ…こちらはイザークの周辺が大変らしい。」
イザークとディアッカとは常に連絡を交わしている。
事態をこんなに穏便に出来たのは、彼等の理解があっての事だったのは事実だ。
「かなり難しい任務とか?」
「違うよ。複雑な四角関係に悩まされているとディアッカから…。」
今…現在アスランとイザークとディアッカ…そしてハイネの四人で修羅場が起こっているらしい。
そんな恋の話が出来るのも、散々自分達が真似返したつけなんだろう。
「イザーク隊長には本当にお世話になりっぱなしだったから、どうにかしてあげたい。」
「無理だろうね。人の恋路に踏み込むのは骨が折れる。シンそれよりも一緒にお風呂に入ろう。」


急なお誘いでシンは動揺した。
既に上着を脱ぎ始めているキラ。
もう何度目だろうか。キラに抱かれるのは。
夫婦なんだから当たり前なんだろうけど、どうやらキラは本気でシンを花嫁と思っているらしい。
(俺も男なんだけど?!そこんとこキラは分かっているのかな…。)
呼び方も『キラさん』は夫婦になった時点で禁止で、
『キラ』っと呼ぶようにキラに言われそうなった。
困った事に日々シンに対するキラの独占欲は増すばかり…
実際シンがキラを逆に抱こうか?っと提案したら、
折檻だと言わんばかりにその日は滅茶苦茶に抱かれてしまった。
まだまだ体調は悪かったのにも関わらず、だからその時以来キラの前では妻としていた。
「俺の体がもたないよ。キラは激しいから。最初の時はゆっくりだったのに。」
「だってシンを満足させてあげたいから。しかも君は僕のものだし…。」
そう言うなりキラはシンを抱きかかえて風呂場へむかった。


そしてバスタブの中、男2人では狭いのに入り互いを感じる。
「シン…君にいつも僕の事を考えて欲しい。」
「考えているよ。どうしてそんな事を?」
「まだ嫉妬しているんだ。アスランとレイに…。僕より先に出会った彼等を。」
時々自信なさげにするキラに…
「でも俺のこれからはキラだけとの未来(じかん)だよ。それにキラが思っている以上に、
俺はキラに夢中だし…。」
そう言ってキラの一物を狭い自分の谷間に受け入れ、シンは行動で幸福を伝える。
蠢くそれはキラとの絆。
決して楽にはシンとて抜き差しされていないけど、だからこそいつも覚えておける。
キラが腰を打ち付ける度に、お湯が溢れ零れる。
「自分が女じゃないのが恨めしいよ。そうであればキラとの子供が出来て、
もっと確かな家族になれるのに…って何度も思った位だから…。」
「シン。いつか僕のスーパーコーディネーターの力で作ろうか?僕達の子供を。」
真面目にそう言い切るキラにシンは
「今はそんな事よりも、二人の時間を大切にしよう。キラ…。」
他愛無いそんな日常ですらシンにとっては嬉しい。
だから…

今はこのままで…





完結まで長かった物語でした(笑)
正直、書き始めて数年前一度休止する時には最後のシンの相手…
レイにしようと決めていました。
もしくはステラかな?
しかし再開して書けば全く違ったキラさんとのラストになっていて、
『あれれ???』って自分にびっくりしました。
結局おいしい立ち位置にいつもキラさんは居るもんです(笑)
何気にシン総受けっという肩書で爆走したものですので、
実は書きたいシンとの組み合わせはこの長編で完全燃焼したようなものです。

そしてちょっとだけ伏線張りましたが、今度は頭を切り替えて外伝にあたる話を書きたいかな?っと。
今度はイザークが主軸となる話です。
何処かの日記で書いていましたが、自分でも一度しっかりと書いてみたいと。
構想は出来ていますので、あとは形に出来るかですが(笑)

何はともわれ、ここまで読んでお付き合いして頂きありがとうございます。