棘〜IBARA〜第二話〜『十字架の縛め』




再び動き出した時間。
砂時計の砂がさらさらと下に滑り落ちる。
でもそれは誰の為に…


ZAFTへの介入は僕の中での革命的出来事だった。
正反対であった嘗ての立場。敵の根城に今度は仲間だといって関わる。
第三者からみたら理解不能で、不可解なことをしていると軽蔑するだろう。


青い軍服を身に纏っていた時は成り行き…

紅い軍服を着ている今は、罪滅ぼしの為…

所詮運命の海原に飲み込まれて、流されているだけの自分。
どんなに優れていても、地球の歴史は止められない。
特に人種的な確執はどちらかの敗北でしか、その決着でしかゴ−ルはありえない。
それでも信じたいのは双子のカガリ=ユラ=アスハと同じ考えだった。
そこまで人間は愚かで卑小な存在ではないと…
武器の排除と、其処に住まう人類の認識の変化。
当たり前の事を述べる彼女の賛同者は、先の大戦で何かを悟った者達だけ。
過ちを本気で認める勇気など、指導者達には期待出来ない。
自分も勿論カガリ側に含まれるが、全てがそうではない。
そもそもナチュラルとコ−ディネ−タ−の根本は何か?
同じ人間であり、喜びも痛みの感覚も共通のものだ。
才能やそう言った部分で言えば、差は歴然だったが可能性はこれまた同じ。
何が人を戦いへと運んでいくのか…


まだその答えを誰ももっていない。

最高と言われている僕ですら、未だ捜し彷徨っている。

「キラさん。此処にいたんですか?」
「シン…。」
かなり今の不自然さに思いを馳せていた。
そんな射撃訓練の真っ最中だったキラに、笑ってすり寄ってくるシン。
ゴ−グル越しであったが、シンの姿ははっきりと感じて捉えていた。
孤児となって、プラントに移住したシンは思った以上に人懐っこい。
皮肉屋だが素直でいるから他人がほっていかない。
たまにそれがキズと言われて怒りっぽくなる。
しかしそれが彼の処世術に過ぎないことは判っている。
同室になってそれがはっきりと…
「しかし上手いですね。全弾命中です。」
「シンだって訓練の成績は上級じゃないか。感心したよ。」
「そうですか?これは来るべき平和に生きている人に襲い来る魔の手への準備です。
そして家族を奪った敵にも対抗する力です。っていっていることちぐはぐですね。」


(その敵が僕だ。君を孤独にした…)
シンと同じ空気を吸うことが実際は苦しい。
他人のささやかな生活を破壊し、そしてのうのうと手負いだと言い訳をしていた。
それでも散っていった犠牲者のところへ行くことは許されない。
シンの存在はキラにとって免罪符だった。
少なくとも今日までは…


シンは同期のレイ=ザ=バレルに誘われて先にその場を後にした。
常にシンの側に居場所があるレイ。
金髪で切れ長の美男子。寡黙ながらエリ−トと周囲に揶揄されている。
はからずともシンの前の同室者であり、交友関係は今でも続いている。
その彼は配属された新人の自分に、いつも安心感を与えるシンから引き離す。
「そろそろ部屋に帰ろう。」
がむしゃらに何かを忘却しようと、訓練に集中して時間を忘れる。
その逃げ場から、長い廊下を渡って部屋に戻ると…
「レイ止めろ。止めてくれ…ああ…ううっ…ん。」
カ−ドキ−を通して、扉をオ−プンさせると、 悩ましげな声がキラの耳に入った。
何が行われているのか知りたくって、そっと気配を与えず入ると
「…シン…。お前が欲しい。」
そう言いながら重なるシルエット。
シンの上にのし掛かってレイは噛み付くようなキスをしていた。
レイがシンの口腔をざらついた舌で舐め回し、もっと深くシンを確かめる。
歯列を割って侵入するそれを、シンは受け入れられず逃げようと顔を逸らす。
しかしレイは許さず、シンの上着を捲りあげて裾から手を差し入れて、突起をまさぐる。
細身のシンのそれを摘んでは弄くって、シンをより痴態へと誘う。
「ああ…いやだ。うう…。」
首を振り乱してレイの行為が嫌だと訴えるが、
「駄目だ。これ位でねをあげたら。どんなにお前が嫌がっても最後までするから。」
シンの両腕を掴み捻って、シャツを破いた。
ビリビリと裂ける音がシンを困惑に陥れる。


そして覗かせた白い肌を見て
「いつも綺麗だと思っていたよ。この肌を…。しかし直接触るのは初めてだな。」
(正確にはお前が正気で触るのはだが…)
首筋からゆっくりと舌を這わせて、シンは思わず仰け反った。
冷たい唾液がリアルに感じて、しかもレイは申し訳程度のささやかな突起に噛み付いた。
「やぁ…嫌だ。止めてくれ…。」
こりこりと噛んでは解していくレイの歯が堪らない。
どうしようもなく、シンは激しく抵抗するが、レイの片手がシンの雄を掴んだ。
「うっ!!…あああ…」
トランクスの中心を扱いては、シンの動きを塞き止める。
今まで他人に触れられた事がないそれは、未知なる領域にシンを連れ去る。
はしたない先からは、精が零れてレイの綺麗な掌を汚す。
白く粘りがあるその汁をレイは
「シン。口では拒んでいても此処は正直だよ。俺を素直に感じて涎を垂らしているよ。」
そしてあろう事か指を舐めた。シンの液が絡みついているその指を…
「あああ…きっ汚いのに。」
「汚くはない。美味しいよ。シンも舐めてみるか。」
そう言いながら自分の指を舐めさせた。
まるでおしゃぶりに吸い付いているような自分が嫌で、シンは涙が零れた。
しかも苦く、この異常な状態を信じられずにいた。
その姿態はレイの中の嗜虐精神に火を点けた。



シンの唇から指を抜いて、下着を手早く取り除き、蕾を探しあてて其処に指を差し込んだ。
「な!!何をするんだ。痛い。痛い…」
流石にそれは我慢が出来ず、足でレイを蹴り上げようとした。
しかし叶わず、シンの股に身体をねじ込んで、動きを完全に制止させた。
そしてベルトで両腕を縛り直し、シンの中心をレイは口に銜えた。
その最中でも指で花弁を受け入れやすくするために解す。
生暖かいその迸る精液と、差し抜きが繰り返される事でシンは意識が混乱していた。
レイの舌先がむき出しの先端に刺激を与えて、シンは射精をしてしまった。
「あああ…。」
レイの口の中に吐き出されたそれに羞恥心を感じていた。
でももっとそれを認識したのは、レイが喉を鳴らしてそれを飲んだ事だった。
汗が伝って、レイの反応を待った。
「シン。これは奉仕だよな。なら今度はお前が俺にしてくれ。」
そしていつの間にか三本に増えていた指を抜いた。
そのまだ開かれていない場所に、レイは自分のスボンのチャックをおろして
「わかるか?これがお前に銜えて欲しいと飢えている。」
綺麗な顔には不似合いな位、雄雄しい一物。
先から滴り落ちるものは、シンの艶かしい痴態で溢れた興奮の証。
これからが恐怖の時間だと、レイは暗闇で微笑む。
丹念込めて準備した部分に、先端を押し当てて一気に貫いた。
「あああああ…ううううう。いたい。止めて!!」
足を担ぎ上げて更に最奥を突き進む。
堪らない重量でのそれはシンの花弁から、 出血とレイの精液が混じってシ−ツを汚してゆく。
ピストン運動がベッドを鈍く軋ませる。
レイの腰の動きで、シンはあられもない姿で受け入れる。


強姦を涼しい顔でやってのけたレイは、数回射精してシンの部屋から出て行った。
しかし玄関でキラとすれ違い
「覗き見ですか。悪趣味な。」
「何を言っているんだ!!しかも彼になんて事を…」
「SEXですよ。それにシンはこうでもしなければ気付かない。
自分が如何に他人を翻弄させているのか。誘っているのか。」
「あれは立派な陵辱だ。開き直るな。」
「でもそうだと分かっていながら、最後まで止めなかったですね。どうしてですか?」
一番痛い部分をレイは問いかける。
腕には自信がある。巨漢でも勝つのは容易だ。
しかし動けなかった。足が震えた。
同性の性交を見ての驚愕とも言えるが
「貴方も本当はシンにそうしたかったんですね。ですがシンあれが初めてではないですよ。
くすっ… 多分ギルバ−ト議長。軍に復帰したアスラン=ザラ。 どちらも知っている身体です。」


強姦されたシンは疲れて、裸で眠っていた。
頭をスパ−クさせて、キラが近付いても寝入っていた。
それをどす黒い感情で見つめるキラ。


「君から全て奪ってあげるよ。心も身体も…。」