『追って来い!』(完結)

事件FINAL☆:男雛( アルタイル )の希望






ヒカルがいや『太陽(アポロン)の光』が男の子としての運命を選んで数年後…

「ヒカル兄さん。電話よ。」
神社の本来の神主である倉田が戻ってきてヒカルは藤崎家に戻ってきた。
しかしあくまで“進藤ヒカル”として…
事情は桑原が祖父として上手く話したお陰で、両親に直ぐに受け入れられた。
捜索願いすら出せないように、記憶操作を施されて細工されたヒカルの身柄。
あかりとそっくりの顔がなければわからなかったが、現在では溺愛の域に達している。


「何だアキラかよ…。律儀だな。恋人として。」
「君は薄情だな。こうして電話をかけるのは僕の担当か?たまには君からかけても ばちは当たらないと思うぞ。」
「俺は勉強で忙しいんだ。お前の第一志望の大学を受験するんだから!!」
「そうだったのか!!嬉しいよヒカル。」
ヒカルは怪盗業をしていた時、殆どの課題を佐為に任せていた。
その上一度は自主退学を考えていて、現実の勉強はからっきしだった。
双子のあかりがしっかりとしていたお陰で、何とか人並み程度には力がついた。
(アキラには負けられないから。悔しいじゃん。
恋人は国立で俺は私立なんて!!でもそこでも同じクラスになれたらいいな。)


目出度く恋人関係に発展した二人。
それは喜ばしい事だったが
(まだ【怪盗H】をしていることはアキラには言えない)
世の中に認められるように頑張っている相棒…藤原佐為
千年前の彼に負けないように、ヒカルも人助けを目的とした怪盗をしている。
(今までは自分と佐為の為だけだったけど、今度は夢を運びたい)
和谷のバイト先のファ−ストフ−ド店近くの連絡版。
「いつも汚ねぇ字で埋め尽くされているんだ。進藤も見てみろよ。」
呆れて指差すところには沢山の人の思いが書いてあった。
そこでチョ−クで書かれた捜索の類の事柄。
「まあどうでもいいことだし…それよりゲ−セン早く行こうぜ!!」
(まだ怪盗は必要だな。この時代には…)
それを読んでヒカルは『太陽(アポロン)の光』の 高度な感知能力で引き合わせる事を実行した。
そうして諦めかけな人々の心に一筋の光を与える。


“ヒカル…怪盗HのHとは、希望(=HOPE)から名付けています。
たとえもう駄目だと思う事でも立ち向かえるように…。
ヒカルもくじけそうになったら思い出して下さいね。”

「さてと。今日は門脇って言う人の失われた扇子でも探しに行こう。」

「アキラ君。こんな事お願いできるか分からないが、
【怪盗H】と手口が似ている、 【美少年怪盗A】が出現した。これの捜査に助力を求めたい。」
昇格した緒方は今は芦原と伊角を部下として活躍している。
正反対な誠実な伊角と、どじな芦原に振り回されているがそれなりに楽しんでいる。
だったが、やはりまだフリ−だった。
それは佐為を真剣に思っての行動で、進展しない自分達に焦れてはいる。
「いいですよ。それは多分ヒカルです。彼は黙っているようですが…。」
「とんだ相手をお互いに好きになったものだな。」
「そうですが、嬉しい苦労ですね。」
「全くだな。」


「ヒカル兄さん。今日はどんな衣装なの?私としてはタキシ−ドも良いけど、 白衣のお医者さんのコスプレもいいような気がするの。だから…」
「あかり!!リクエストはいいから社とデ−トでもしろよ。」
「だって清ちゃん。奥手で困っているんだもの。この前だって…」
延々と続くあかりの不満を解消してあげるため、仕方なしにその衣装で怪盗をした。
そしてその先でアキラと八合って、同じ関係に戻っていった。


「進藤…いやいや【美少年怪盗A】!!

何だってそんな格好なんだ〜!!」

搭矢探偵の第一声がこれだった。

(アキラ突っ込むところはそこか?って言うか正体バレている!!)
父親が医師だったので、あかりが拝借した聴診器。
それもぶら下げながら、カルテを片手に冷や汗が…
とっくに盗んだ扇子を白衣のポケットに入れる。
「君は看護婦の格好のほうが素晴らしいんだ!!分かっているのか!?」
「お前は女雛のほうが良かったのかよ!!」
「いや…進藤君…間違えた【美少年怪盗A】!!良く似合っているよ。」
「伊角君。怪盗を褒めてどうするんだよう〜。」
「芦原。気の毒な奴だな。(お前だけこの件について蚊帳の外だったよな)」
滑稽な会話を繰り広げながら、楽しい駆け引きをしていた。
でも欠けているのは相棒佐為がいない事。


(今日は15日。佐為が現れる日だったよな。)
平安時代に半年。現在に半年。それを区切っているのは、毎月15日。
月光も十五夜を示していた。


佐為神社改め、藤原神社の祠から現れて、ヒカルに笑顔をむける佐為。
平安の衣類を着込んでいた佐為をみて、ヒカルはいつも涙が溢れる。
そのヒカルをそっと抱きしめる佐為は…
「泣かないで…。私は此処にいます。そうですね。 アキラに妹君がお生まれになったんですよ。
明子姫と虎次郎のこども正子姫が…。」
「本当か!!アキラあいつお兄ちゃんに。俺と同じだ。」
余りにもびっくりすることだったので泣き止んだ。
池のほとりで二人は語り明かした。


どの位そうしていたのか分からないその時
「さあ行こうかいのう。佐為君。積もる話は明日にしてじゃな。」
桑原老人の家の世話になっている佐為。
神社の神主が戻ってきて、彼も困っていた時桑原が身柄を引き取った。
「少しは頑張っていますか。貴方は家事が苦手で苦手で…。」
「お前さん。以前それが家賃代わりだと言っておったじゃないかのう。」
「困った大家もいたものです。」
肩をすくめて佐為はため息をついた。
しかし桑原は外見とは裏腹に、趣味が佐為と共通するものが多く、 話題が二人のなかで途切れることが無い。
だから邪念だらけの緒方より落ち着く。
「今日は肉じゃがでも作りましょうか?」
「そうじゃのう。ヒカルもわしの家に泊まるかい?」
「うん。勿論!!まだいっぱい話したい事があるから…。」


「ヒカル…。いつか言おうと思っていました。ありがとうと…」
エプロン姿で、緒方がいたら鼻血を出しそうな姿。
そんな身形でヒカルに言った。
「何を急に…。俺こそ感謝している。迷い込んだあの日。 本当は俺自分を見失っていた。ほらあかりと俺は双子だろう?」
「ええそうですね。」
「お父さんとお母さんって比べていたんだ。俺とあかりを。 で、いつも褒められるのはあかりで、俺は良くて元気がいいって。 でもお前はそれをひっくるめて俺を大切にしてくれたんだ。」
「私はヒカルが本当に明るくて、前向きで素晴らしいと思っています。」
そんな不安定な時、穏やかに微笑んでくれた。
佐為の存在はヒカルの【家族】そのものと感じていた。


「今…分かりました。私達は出会うべくして会ったと。 千年前の雛人形と半妖の意志ではなく、私達はずっと探していたと。 自分を『追ってくれる』存在を…。」


「二人の世界もいいがのう、ヒカル。『地球』の小僧が睨んでいるぞ。」
いつの間に現れたのかアキラが桑原家の台所にいた。
『地球』の御子として、まだ能力が消えていないアキラ。
っと言うより、ヒカルへの単なる独占欲。
(佐為さん。ヒカルは今は僕の恋人ですよ。少しは遠慮して下さい。)


三人の心の競争は永遠に続く。

何処までも…



『追って来い!!』完結です。
当初は本当にゴ−ルまで行くのか?ちょっぴり不安でした(笑)
管理人にとっての二回目のリレ−小説ですが、前回より手強い感じがします。
しかしさびる様の達筆に随分救われて、漸くの完結です。
此処までお付き合い頂いてこの場で感謝します。

そして此処まで読んで頂いた方達へ…
スペシャルサンクスです☆