『追って来い!』(完結)

事件FINAL☆:女雛(  ベガ   )の終焉






ヒカルがいや『太陽(アポロン)の光』が女の子としての運命を選んで数年後…


「そう言えば俺って元々女の子だったんだよな??」
余りにも男の子としての自分を疑っていなかったので、自覚がなかった。
まるで後から性別間違えて育てました。って暴露された気分だ。
でもしっかりと『太陽』の使命を終えて記憶が蘇ってきた。
何処で住んでいて、家族が誰で…そして…


「今日は私とヒカル姉さんとの誕生日よ。」


双子として一卵性でうまれた藤崎あかりにそう言われた。
ちょっと神頼みしてきた彼女と自分のまさかの接点には驚いた。
確かに他人とは思えないほど容姿は似ていたが…
「そうなのか?俺はそこんとこ曖昧だけど。」
「だって物心ついてすぐに居なくなっちゃったんだもん。 でも私の誕生日は9月20日だから間違いないよ。」
いろいろ大変な身の上の姉に元の生活のルールと、記憶の整理に付き合った。
もっともあかりとて不思議な感覚だった。
恩人の【怪盗H】と同じ屋根の下。
警察が言う犯罪者かもしれない。
公にしたらヒカルは此処にはいない。
(一生言うもんですか。優しい美少女怪盗が姉だなんて本当は自慢したい位だもん。)
そんな中、あかりの携帯が鳴った。


《あかり…実はな暇な警部さんと探偵のやつと、

例の藤原神社で二人の誕生会しようって…来てくれへんか。いますぐ…≫

従弟の社清春からの電話だった。
正にヒカルに説明していた最中の上に、何より恋人からの電話。

「清ちゃん。嬉しいサプライズだよ〜☆でもヒカル姉さんのため?それって」

ちょっと意地悪に聞いてみた。

≪あほやな。俺はそれやったらあかりを誘わん。俺の本命はお前なんやで…≫

そんな社のお誘いであかりは頬を真っ赤にして

「うん。分かった。二人ともしっかりとおめかしして駆け付けるから。待ってってね。」


「アキラ君。そわそわしすぎだよ。」
芦原警部はうろうろとするアキラにげんなりしていた。
もともと男子でも『進藤ヒカル』が好きだったアキラ。
それが元来は女子だったのだという真実。
今までと同じでは進歩が無い。
胸を張って恋人同士になれる事もあるのだから…。
「芦原。彼も困惑しているんだ。もう心に恋心を溜め込まなくてもいいのだから。
俺はお前らはお似合いだと思うが。」


「そうやって可愛いヒカルの将来を決めないで下さいな。」
割烹着姿の藤原佐為が、料理を運んでやって来た。
その後には伊角が一緒に運ぶのを手伝っていた。
「連絡ついたで。あかりもほんまに参加してええんか?」
「いいですよ。だってヒカルの実の妹で貴方の彼女でしょう。」
「進藤君も女の子がいた方が緊張しないですむだろう。」


今でもおかしい位だ。
つい最近までこの『藤原神社』が帰るべき家だった。
今ではあかりの家で寝起きしている。
慣れない生活と、埋まらない現実のギャップ。
「でもよかった。私と同じサイズで。」
若干ヒカルの方が痩せていたのは、あかりの中ではショックだった(笑)
色違いのワンピースを着て、神社の鳥居をくぐる。
夏の残暑もすぎて、ようやく風が冷たいと感じる。
石階段を上る度に、足元がすうすうしていた。


その二人の傍を中学生の2人組が通り過ぎた。
一人はしっかりと胸元のボタンをしめて、名札には“岡”と書いてあり、
もう一人はちょっと着崩して名札には“庄司”と…
すごく焦っていたように絵馬を携えていた。
「どうか…あの子の俺達の幼馴染のハンカチが見付かりますように。」
そんな事を願いながら絵馬を神社の木に括り付けた。
それを見ながら、あかりは懐かしく
「あれがきっかけだったよね。本当にこの神社に訪れてよかった。
でもどうするの??ヒカル姉さん??」
彼らの願いを叶える側にいるヒカルは…
「彼らが本気で見つけようとしたらきっと見つかる。それでもダメならその時は…」


「ようこそ。進藤。あかりさん。」
ヒカル所縁のメンバーが揃って誕生日を祝ってくれた。
おいしい食事と、面白い談話。
それよりも佐為が平安時代からワープして此処にいて笑っている。
最高に嬉しい誕生日を迎えている。
後からこれの幹事は実はアキラがしていたのだと聞いた。
「本当は二人っきりがよかったのだけど、僕だけが良くても進藤が嫌だろう?」
「そんなこともないんだけど。まあ来年はそれでもいいかな。」
そっとアキラの肩に身体を預けてそう言った。
もしかしたら幸せそうなあかりと社の関係にあてられたのかもしれない。
だから本音が出てしまった。それを聞いたアキラは
「僕は『地球』だ。『太陽』の君が居なければ生きてゆけない。
それに君が女の子に落ち着いてから、僕は真剣に考えていた。
どうか僕と付き合ってくれないか?恋愛対象として。」


冗談で言っている訳でない。
以前はどこかヒカル自身、真面目にアキラの想いを受け止めていなかった。
男だったのもあったのだが、こんなにアキラがあの事件を経て、
人間的に魅力的に感じるくらいに成長して、もうヒカルも目を逸らせなくなった。


「いいよ。お前が俺を本当の女の子にしてくれるのなら。」
「ああ。安心して僕を追って来い。いやこの場合僕について来いかな?」
真っ赤になりながら、アキラはそう答えた。
奇しくもヒカルの誕生日が二人の交際記念日になって、忘れられないものとなった。
最早2人の空気が流れ始めていた。
そんな回り始めた恋を、周囲にいた者達は温かく見守っていた。






『追って来い!!』もうひとつの完結です。

管理人にとっての二回目のリレ−小説です。
当時各サイトでの完結は別で、私のサイトでは男の子ヒカルでの完結でした。
サイトを復活したとき、こっそり書いていた女の子ヒカルでの完結を、
UPする時期を見計らっていました。
進藤ヒカル君の生誕祭についに解禁です。
この世界でのヒカル達に興味がありましたら、
当サイトの『追って来い!!』をよろしければ見てやって下さい。

読んで頂いた方達へ…
スペシャルサンクスです☆




進藤ヒカル生誕祭 9 
管理人 大津 拓己様
2013年9月20日
進藤ヒカル君を祝う集いです☆
10月31日終了☆