『続☆千飛んで一回のプロポ−ズ!』ACT:3<テスト>




学生の本分は学業と青春と恋である…


そのまず恋については、迷惑なほど相手からされまくっている。
青春は近々入部予定の演劇部で叶うとして…


【ヒカル…テスト勉強しましょう!】
浮幽霊…もとい幽体離脱中の兄…佐為が発破を掛ける。

とある土曜日の朝。
漫画の『ワンピー●』の最新刊を片手にヒカルは、兄の言葉を聞いていた。
「それもそうだった!!こんなことしている場合ではない。」
慌てて制鞄から教科書とノートを出して、ヒカルは学習机に向き合った。
一番自分の家が落ち着いて勉強できる。
学校へ行くと決まったメンバーの男に挟まれて、かろうじて女の子同士ではあかりとしか過ごせない。
ちょっとフラストレーション気味だったが、それは佐為とて例外では無い。
ヒカルの傍で漂っていると、シスコンな彼は精神的に穏やかでは無い。
しかも目の前の愛する妹は、学力はそこそこだったのに、その心労(??)で、
徐々に学力低下していった。
どうにかこの機会に挽回したいものだったが、
「ヒカル…お隣の塔矢君が来ているわよ。」
とことんその事情と諸悪の根源を知らない、母親の為にそのひとときも奪われた。


「進藤…勉強会のために来たよ。君の為に…」
【ええい…塔矢。貴方がわざわざ来なくっても私が懇切丁寧に教えます。早くお帰りなさい。】
ああ…入院中のわが身が口惜しい…っと佐為が嘆いていると、
「なら。学年10位に入れる位に勉強をつきあって。」
ヒカルが火に油を注ぐような、そんな事を言い出した。
それはヒカルの心境の変化か…と思われたが
(今回が悪い成績だと、クラブ活動はもちろん…おこずかいもSTOPだもの。)
アキラは性格は問題だけど、頭脳はヒカルが憧れる位に優れている。
だから単純に協力をお願いしているだけだった。
そのヒカルの気持ちを反転して受け取って、更に自分論で解釈してるアキラは…
(進藤が僕を頼っている。いやきっと僕の傍にいたいんだ。なんて意地らしいんだ〜☆)
そんなやりとりを見て、佐為は複雑な表情だった。


二人が勉強を開始して5時間経過した時、別の家では…
「ねぇ…慎一郎君。何だか僕達は大きな見落としをしていないか?」
わりかし裕福な岸本の広い家に集まった男達。
目下テスト勉強中。
静かに参考書を開き岸本は呟いた。
耳にイヤホンを差して、英語のリスニングをしていた伊角はCDを止めて
「言いたいのは、進藤さんと塔矢の家が隣同士だって事か?」
「ああ…この期間に家に押しかけて、抜け駆けをしているんじゃないのか…って。」
「塔矢は今更勉強するってがらじゃないからな。ありえるが岸本も伊角も勉強に集中しろよ。」
加賀は確かにお祭り好きだが、生徒会長としての立場もあるので、赤点だけは免れたい。
全校生徒に獲得点数がわかる、今時古風な掲示板張り出しでの結果発表。
ここにいる中で安全圏にいるのは、岸本位だった。
「俺様は理数系が弱いし、伊角は本番に弱いし、三谷はもう一歩だし…和谷はそれ以前だし…」
あれから三谷は脅迫まがいな手で、バイトを辞めさせられ、
不幸にもこのメンバーに入れられてしまった。


「酷い〜!!俺はそんなに悪くないし…。」
和谷が講義するが、伊角が一応和谷の勉強をみていての感想は…
「加賀は鋭い。さっきから全然問題を解いていないよ。彼…。」
そして
「どうして俺は此処に居るんだ??お前達と友達になったつもりはねぇのに…。」
「まぁまぁ…三谷君。僕が手解きしてあげるから、
大船に乗ったつもりで勉強に励むがいいよ。」
岸本は三谷の横に座り世話を買って出た。
実はこの中で三谷は岸本のこんなところが超〜苦手だった。
自分に必要以上に構ってくるところは、実の姉の性格といい勝負だった。
一体彼はなんでこんなに?っと三谷は疑問符だらけだった。
岸本は早寝早起きが信条。ラジオ体操は今でも参加。
だから三谷出演の朝ドラはしっかり見ていた。
急に近くになったかつての子役は、それとは裏腹に学力はいまいちだった。
(かつてのファンとしては見過ごせないな…)


「なあ…加賀先輩。此処教えてくれへん?」
国語を勉強中の社が加賀に教えを請う。
どうやら平安時代の文学だった。
「何々…紫式部が書いた文学小説は…って。社これは『源氏物語』っていって、
桐壺帝の息子の光源氏の話で彼が繰り広げる愛憎がテーマだ。」
そう解釈してやると、周辺の男共はざわめいた。

(進藤)ヒカル源氏…が繰り広げる愛情の話だと!!


もんもんと自分と十二単で着飾ったヒカルが、平安京で優雅に暮らしている姿を妄想。
和服がみせるうなじのラインの色っぽさ。恥じらい。
くちびるには紅が塗られて、頬紅が彼女の照れ隠しにもなっている。
その彼女を寝台で徐々に生まれたままの姿にしていく…


「和谷…社…三谷…伊角…なんでお前ら鼻血出してんの?」
加賀は社にただ教鞭をたれただけで、こんな反応が返ってくるなんてビックリだった。
家が鼻血まみれになるのは勘弁だと、岸本はハウスキーパーに濡れタオルを頼んだ。
どぼどぼと流れるそれを、ようやく理解した加賀は
「ははぁん。お前達。ひかるって聞いただけであいつを思い出したんだな。」
そう納得したが、彼らはそんなレベルでは無い(笑)
もう勉強どころではない位に、脳内はやばくなっていた。
こんな調子でテスト本番は大丈夫なのか?っと、ある意味強靭な精神力であり自制している、
目の前の生徒会長と副会長は呆れていた。





今のところアキラの一歩リード。
基本的にヒカルも天の邪鬼かもしれません。
しかしもう一方の勉強会ではやりたい放題です(笑)