『千飛んで一回のプロポ−ズ!』ACT:12<オカルト>




桑原理事長に乗っ取られた佐為・・
加賀の意味深な言葉・・
その常識を掻い潜って暗躍していた者とは・・果たして・・


「かたついたで。でも良かった。佐為さんが肉体派でなく武器専門で・・」
中身は多分凄腕の格闘家である筈だったが、如何せん肉体は絶世の美男子。
青春を叫び続けた若者ではなく、平穏を求めるただの大学生。
「社君。僕達はそれより深刻なんだ。ボリボリ・・」
「伊角先輩。いい加減俺のおやつ食べるの止めて下さいよ〜!!」


気絶した佐為をヒカルは布団をかけて
「お兄ちゃん。昔っから霊感があって、四択問題は殆どそれで解いていたから・・」
その言葉で岸本は・・
「勘で全てを乗り越えて来たのか。素晴らしい!流石我が学校のOB!!」
感激の余り眼鏡が曇っていた。
「だから俺様が尊敬しているんだ。分かったか岸本・・」
偉大なのか、はたまたアバウトなのか分からない佐為・・
しかし彼が博識なのは誰もが認めていた。
「洪(ホン)おい!起きろよ。俺達蚊帳の外だぞ。」
筋肉ふにゃふにゃの技でやられた高(コ)が目覚めた。


「でも動かないんだ。どうしたらいいんだ〜!!」
かなり困り果てた洪(ホン)を救ったのは・・
「僕が何とかしてあげるよ。ほれ!!」
アキラが適当なつぼを押して二人を救った。
その手腕に周囲はびっくりしていたが、アキラはこう見えて整体師の明子を母親に持っていた。
師匠桑原になぎ倒されていた行洋をいつも支えていた母・・
自然と覚えていたのだったが、今回のはまぐれだった。
正に行き当たりばったりである。
「加賀先輩。話の続きをお願いします。」
将来の義兄のためと、皆挙って佐為を救出しようとしていた。


加賀は韓国人が常に携帯していた地図を開け・・
「この進藤家は沢山の家に囲まれている。塔矢家と社家・・そして真後ろにある豪邸・・越智家が・・」
進藤家の日照権をかなり侵害しているはた迷惑な家・・
それが【越智家】!!
「そこの坊ちゃんはオカルト知識が豊富で、しかも昔このお転婆に振られた経験がある。」
覚えが無いぞとヒカルは難しい顔をする。
アキラも常日頃ヒカル身辺にはアンテナが激しく機能していたゆえ、それが初耳な上越智の恋など感知していなかった。
二人して悩む。


「丑三つ時に神社の大木に、誰にも見付からず藁人形を釘で打つって奴?」
洪(ホン)は日本漫画ぬ〜●を読破していたので、さらっと言い切った。
呪いの代表例を聞くなり、緒方は帰りたくなった。
だが教師が教え子をほっぽりだして安全圏にいるわけにもいかない。
「ならば真相を確かめに行こう。」


加賀が越智家の呼び鈴を鳴らした。
そして間を置いて・・
『はい・・どなたですか?』
如何にも不機嫌な少年の声が聞こえた。
「加賀様とヒカル姫と、その他だよ。お前に用がある。」
『僕は無いね。お帰り願おう。』
「まあ待て!愛しいヒカル姫が大層お困りらしい。それでもか・・」
インタ−ホン越しで越智に動揺が走った。
彼にとってヒカル=姫だった。
金持ち特有の嫌味をスル−し、逆に越智をけなす。
苦手だった彼女はしかし、越智にとって寂しい孤独を何時も癒していた。
自分に無い世界へ連れ出してくれる大切な・・
淡い初恋・・かなりベタな・・


『分かった。』
そして通された越智家は何から何まで成金を物語っていた。
中世ヨ−ロッパな部屋と、東洋系な部屋。
しかし某映画の秘密の小部屋は残念ながら無かった。
「で・・佐為さんが霊的な災いでそうなったのか。でも安心してよ。ヒカルちゃん。僕じゃないから。」
確かに天使ものにも、悪魔ものにも神話にも、呪いにもおまじないにも通じている。
でもそれはヒカルに群がるものにこそ発揮されなければならない。
佐為は越智にとってもある意味VIPだった。
しかも桑原と共闘する理由が無い。


「越智君・・誰か心当たりはないかな?」
伊角が真剣に話した。
それを聞くなり越智はPC前に座り・・
「確信はないよ。でもこの状況を唯一作り出せる人物は彼しかいない。」
驚異的な速さでキ−ボ−ドを叩き、そしてある人物をクイックした。
それをプリンタ−で印刷して、その場の人間全てに配った。
多分むさい男達に自分の周りを覆って欲しくなかったからの行動だった。


「これは・・いや・・でも・・」
犯人像が絞り込まれたが、誰もがそれを微妙な反応でかえした。
顔つきだけなら誰しも納得していた。
雰囲気もまんざらではない。
しかし理由が分からない。
「容疑者は本当に・・」
「ほぼ間違いなく彼だよ。君達は誤解しがちだが彼はヒカルちゃんをずっと見ていたから・・」
越智は年下ながらヒカルを木陰で見ていた。
危ない意味ではなく、多分下心はこの中で最下位な位の心理で・・
その中同質のものを発見した。


「じいや・・彼をこの家に出頭させてくれ。」
そして手を鳴らして現れたお付き人は車で出かけた。
「越智・・お前本当にいい奴!!」
ヒカルは越智に抱き付き感動と感謝を表現していた。

しかし胸が越智の頭にすりすりされて越智は真っ赤だった。

そしてアキラは烈火のごとく違う意味で真っ赤に怒っていた。






出鱈目な関係です。
越智の性格で悩んだ末、こう言った感じになりました。