『千飛んで一回のプロポ−ズ!』ACT:11<ゴ−スト>




恋愛にはどんなに思っても参加出来ない時がある。
誠意や外見がどうのではなく、単純な理由である。
そう・・それは・・。


緒方と行洋は意気投合し、行洋が通販で買ったハンドカラオケマイクで歌っていた。
本人達は気持ち良さ気にのりのりで歌っているが、周囲は意外と冷たく・・
「緒方先生は何をやっているんだ!」
伊角が最初に緒方の行動に苛立った。
手には和谷からふんだくったポテチが袋ごと握られていた。
「こぶしまで巻き始めているがな。」
社はその意外な一面で微妙な反応だった。
「演歌でも歌うつもりか・」
洪(ホン)は日本の独自の文化とは一体・・と思っただけで興味は無かった。
しかし援護するつもりが無いらしく、かなり投げ遣りだった。


そして進藤家の振り子時計が8時をさした時・・
「ミュ−ジック ス●−ションが始まっちゃうよ・・テレビテレビ・・」
ヒカルはテレビのリモコンで、自分の趣味に走っていた。
誰が見ても見栄えのする歌手が揃い、ヒカルは溜息が出た。
側の色男達は彼女の中でどの位の位置かこれで分かる。
「進藤・・僕はね。君の為ならラブソングを歌えるよ・・」
でもヒカルはテレビに夢中だった。


ぞわぞわ・・と急に佐為に悪寒が走った。
万年風邪知らずの彼が、背中にこんにゃくを入れられたような気分を味わう。
「どうしたんだ?佐為さん。」
加賀がその変化にいち早く気付いた。
流石野生の勘がギネスブックに載り掛けただけの男・・
「加賀・・気付いていたか?この家と言うより進藤君に纏わり付く不穏な空気を・・」
岸本も打てば鳴る様に何かを感じた。
それが佐為をどうやら標的にした。


この話始まっての一大事に、幾人が深刻に考えているのか。

【わしは・・ついに憑依に成功したわい・・】

いきなり親父を超えて、老人くさくなった佐為の口調。
それには流石に縁側で緒方の不甲斐なさにブ−イングしていた者も、テレビに夢中になっていた者も釘付けだった。
表情まで変化を遂げて、佐為の折角の美しさがダウンしていた。
「貴方は・・一体・・」
アキラは勇気を持って話しかけた。
その健闘に周囲は手を叩いていたが・・
「ぶ・・分裂している・・どうしてだ?」
ビュ−ラ−で眉の手入れをしていた高(コ)はそうぼやいた。
どうやら彼だけはマイペ−スだった。


【わしは何者かとな?ならば教えて進ぜよう。わしは囲碁学園の理事長・・桑原だ。】

「失敗した!り・・理事ちょ〜う・・う・・」


やっと進藤家に戻ってきた緒方はうろたえた。
前門の虎(行洋)と、後門の狼(桑原)の挟み撃ちで、緒方はかなり大きな痛手を受けた。
過去を知っている男と、現在の上司・・
しかし桑原は・・
【進藤ヒカルと申す女子(おなご)・・わしはなお前さんが若い頃のばあさんに似ていて、興味があった。】
「えっ・・俺・・私が??」
きょとんとしながら、目をしぱしぱさせていた。
【ほんに・・ええ娘じゃわい。】


そして佐為の顔でヒカルに迫っていく桑原これでも理事長・・
「何をするんだ〜!!いくら学校一偉くても僕はヒカルちゃんを守る!」
洪(ホン)がヌンチャクを取り出し暴れ始めた。
それを見た高(コ)も、お酒は日本では未青年禁止なのを知らず飲み、すい拳を繰り出したが・・
【甘い!!わしを誰だと思っている。この家の隣の行洋の師匠・・。雑兵が束になっても勝てないと知れ!!】

進藤家に迷惑をかけない辺りが凄く、何やら指でツボを押して彼等を薙ぎ払った。

「しっかりしろ!!傷は浅いって言うかあらへんし・・」
社が二人を労ったが彼とて立ち向かわなくてはならない。
「何だろう・・この威圧感・・。まさか・・」
雑草を毟り取っていた行洋が、ただならぬ気配に戦いていた。
しかし自分の庭先を侵略する敵ではなかったので、何事も無く遣り過ごしていた。


「慎一郎君・・今回は思いっきりキレていいから・・」
岸本は眼鏡をかけなおし、伊角を嗾けたが・・
「嫌だ!!進藤君の目の前でみっともないから・・」
「充分俺達醜態をさらしているような気がするよ。伊角先輩・・」
和谷はそう言ってみたが・・

「「それは君だろう・・絶対に・・」」


上級生の無慈悲な言葉に、加賀が和谷を優しく諭した。
「そんな事はねぇから落ち込むな。しかし入院中の理事長が何故此処に現れたんだ?」
「加賀先輩・・それは一体・・」
アキラは状況判断の手段として聞いていた。
話せば長くもない・・桑原はぎっくり腰と生活習慣病で只今入院中だった。
でも頼りになる森下学園長のお陰で、学校運営は賄われていた。
内部事情を生徒会長は網羅していていたから、今回の桑原の出現に疑問があった。


「憑依が何とかと言っていましたが、そんな漫画のようなまね出来るんでしょうか?」
変わり果てた佐為に同情は寄せられていて、皆学校のリ−ダ−に縋る。
「誰か共犯者がいるな・・」
そしてこんな所業が出来る人物を加賀は知っていた。
「俺の勘が正しければ、間違いなくそいつだ。」


加賀の謎の言葉を余所に、合気道で互角に戦っていた社・・
しかし観戦者はいなかった。






人口密度が異常に高い話・・
何とか収集がつきUPしました。