『千飛んで一回のプロポ−ズ!』ACT:10<アルバム>




人は見掛けに寄らないもの。
こと恋愛面ではそう言った部分が多く見かける。
思わない相手が自分の行く手を阻んでいる現実。
しかしそれに挑む姿は絶賛されても良い筈だ。


進藤ヒカル嬢の思い人が塔矢行洋だと知った集団。
早速簀巻きにされていた韓国人も解放され、緊急会議が始まった。
「塔矢行洋とは一体・・」
ヒカル・アキラ・社・加賀・佐為はよく知っている人物だが、他の人間は知らない。
特にプライドを看板に上陸した高(コ)はアキラに噛み付いた。
「凄く不愉快だ!我が愛しの少女がおじん趣味なんて!」


それはごもっともだが、アキラは何だか複雑だった。
ヒカルが年上好みだったら、条件範疇外の自分の立場は・・
せめて9月以前の生まれだったらまだ可能性がある。
例えるなら遊園地の乗り物で、高さ制限ありのものに乗りたく行って見るが、5mm足りないと言う心理だ。
もっと解り易く言うと、宝くじで2番違い位の悔しさに近い・・


「塔矢行洋はそんなに良い男なのか?社君!」
「いやどうやろう。昔な3人で遊んどった時、可笑しなことをしとったんや。」
「もったいつけないで、教えてくれよ。」
伊角と和谷が社の話を待ち望んでいる。


その日は暑かったらしい。
例年よりも気温が高く3人は当然薄着だった。
しかしセミも穴蔵に戻りたい上、洗濯物が紙状態のそんな中・・
「あのおっちゃん。絶対体温でたらめやで・・分厚そうな着物を羽織っとったんや。」
今ものん気に高そうなス−ツ姿で水撒きをしている。
「何だか変な人だな。掴みどころが無いと言うか・・」
岸本も乗り出して首をかしげた。
遅くなったので気を遣って進藤母は、近くのテニスが強い息子がいる河●寿司に電話して出前を頼んだ。
それが運ばれて会議で白熱している男達の空腹を満たす。


ゲップをしながら加賀は
「あの人は意外と侮れないぜ。」
爪楊枝で歯の掃除をしていた洪(ホン)が、加賀の顔をじっとみて
「僕の調査対象外だったので教えてくれ・・」
「実はな昔っから俺はあの人の縄張りである塔矢庭を狙っていたんだ。」
その言葉で佐為は懐かしそうに・・
「柔道・合気道・空手・ボクシング・などなど肉弾戦で、このバカはことごとく敗北し、行洋さんに勝ったためしがなかったんだよ。」


百戦錬磨の加賀が何時も黒星を貰っている。
それには流石に緒方もビックリした。
「我が学校が誇る番長が・・負ける相手とは・・」
息子は体力にとんと恵まれていない所為で、その言葉が疑わしくなるが・・
「腕一本で返り討ちだったんだ。そして何時も進藤家に駆け込み、この家の住民が余り世話にならない救急箱の消費者となったんだ。」
そして看護婦でもない佐為が、何時も手当てを嫌々していた。
だから佐為は疎遠していたのに、その彼がよもやこの家で妹に悪戯をしていたとは・・
恩を仇で返していた加賀・・
思い出しただけで佐為は腹が立っていた。


「総合して未知なる人物だと結論が出たが、本題は此処からだ。」
緒方が教師根性で取り仕切る。
そして敵情視察だと代表で緒方が接触する。
苗に肥料をやっていた行洋は、突然の乱入者に驚いた。
しかし無視をしてスコップで土を掘っていた。
「あのう・・済みませんがちょっと聞きたい事が・・」
緒方は出鼻を挫かれたが、何とか立て直した。
その必死な緒方を老眼になりかけの瞳で行洋は見た。


「君は・・確か私の妻明子に昔思いっきりふられたせいじ坊やかい?」


世間は狭い・・

いや、ひじょ〜に狭い!!


緒方と行洋は何だか知り合いだった。
ついに赤裸々になる緒方の過去・・のはずだったが・・


「大きくなったね。その分だとさぞかしもてているんだよな。」
皺を深めながら呟く行洋・・
嬉しそうに緒方とビ−ルを手に乾杯していた。
しかし・・


「恋敵のペ−スに飲まれてどないするねん!」


意外と冷静な社が隣の関係ない和谷の腹に突っ込みをいれる。
それが本場の漫才か〜と和谷は感心した。
そして
「ほんまどすなぁ〜!!」
と言ってみたが大人二人の遣り取りに皆注目して、完全スル−された。
落ち込む和谷だったが、彼は何かを感じ取った。
(だったら・・学校で俺が感じた殺気は何だったんだろう?)


激しい嫉妬混じりの視線。
その奇妙なオ−ラ−・・
しかも何故か今も感じていた。
(問題はまだ解決されていない。一応塔矢に話しておこう。)
そしてアキラの放心した現状を治すため、ほっぺたを叩いた。
それによりアキラも流石に現実に戻り・・
「ぶったね。パパにさえぶたれた事が無いこの僕を・・」
何時代の人間かと問いたいが、今は一刻を争う。
和谷は正直にアキラに話した。
時には手話を・・そしてモ−ルス信号まで使いながら・・


「進藤が危ないんだね。ありがとう和谷君。これで僕の価値を上げる口実が出来る。」
俄然やる気を取り戻し、アキラは目を輝かせる。
ようは条件がどうのこうのではなく、ヒカルとゴ−ルインすれば良いのだと。
敵に塩を送りすぎた和谷は・・


(俺ってお人よしだ〜!!)



と今度は彼が放心していた。






訳がわからない展開は何時もの事だが、この話は意外と長くなりそうです。
期間限定集中連載を目指していたのが嘘のようです(笑)