『千飛んで一回のプロポ−ズ!』ACT:8<ギフト>




近代国家日本。
その都心の中でも人口密度が高いと今なら言える場所・・【進藤家】
正確には客間限定で、国際化まではかっている。


「お久しぶりだよヒカルちゃん。僕は会いたくて仕方なかった。」
洪(ホン)が茶菓子を齧りながら、そう言葉を零した。
その図々しい態度に怒りを通り越して感心している男共・・
鈍いのか・・そんな空気を外国人気質で軽く流した。
「私も覚えていたよ洪(ホン)君。だって忘れられない・・あの出会いは・・」
意味深な単語がヒカルの中から出てきた。
アキラは聴力をいつも以上にMAXにして聞き耳をたてる。


地図を片手に観光旅行と洒落込んでいた進藤一家。
しかし国の壁は異常に高く、言葉が伝わらなかった。
天才児通称【模擬荒らしの天才児】は韓国語を網羅していたが、いきなり使えるような代物ではなかった。
自分の無力さに嘆く兄・・それを見守る人任せな家族。
そう例えるなら関東弁と関西弁の境界線とでも言っておこう。
そこで困り果てた一家に、高(コ)の最新流行の為だと常日頃振り回されていた洪(ホン)が助けた。
彼はペンパルと言う文通で、日本語もマスタ−していた。
そこに文才があったかどうかは、定かではない。
大きい荷物を両手に抱えて、土地に不慣れな日本人に話しかけそして案内した。

世界でも人気の日本女子は、洪(ホン)の中での憧れの部分だった。
そっと横目で見ていたヒカルの飾らない可愛さ・・
しかもその時夏だった為、スカ−トを穿いていたヒカルの生足に洪(ホン)の心は欲情した。
そして遅れてやってきた高(コ)も同じ感想で、ヒカルは外国人を虜にした。
しかしそんな事はヒカルは知った事ではなかった。

「すなわち君達は進藤一家のガイドブックだったんだね。」
岸本は大してヒカルの中に食い込んでいない彼等に安堵した。
その態度が高(コ)の自尊心に触れた。
「そこのガリ勉君。俺達は進藤家の救世主で、ヒカルの頼もしい男達だ。」
そして睫毛を指ではねて格好つける。
その明らかに人をコバカにした言い方で、岸本の隣の加賀が何故か爆笑した。
「ははは・・!!お前面白い奴だ。お転婆のこいつの尻を追い駆けて此処まで来た言い訳がそれとはな・・」
余りに可笑しいので、腹まで抱えて笑い出した。
その遣り取りをハラハラとして和谷は見ていた。


ブチブチに切れ掛かる高(コ)に、伊角は一喝した。
必殺技【黙れ越智!!高(コ)!!】と・・
彼が一番切れたら怖い事を岸本は知っていたので、背中を叩いて落ち着かせた。
「ヒカル・・韓国旅行は楽しかったよな。」
「佐為お兄ちゃんもそう思う。俺・・いや私もそう思っていたの。」
微笑み交わす兄妹の空気に、社はのの字を書いて剥れていた。

が!!


「そう言えばおたくら・・ヒカルちゃん家の周辺で何しとったん?」
すっかり馴染んでしまった彼等を、社の疑問が冷や水をかける。
そして反旗を翻した日本軍。
大和魂と言う高尚なものではなく、単に面白くないからの幼稚な反撃だった。
「そうだった。進藤をずっと付回し、隠し撮りやベストアングルでの盗み見、 あまつさえ進藤愛に溢れた僕に対する【ラブレタ−処分事件】の濡れ衣・・誰が許しても僕が許さない。」


今度の怒りの発火点はアキラだった。
たまたま隣だった洪(ホン)に向かって
「君はアイドルを追っ掛ける人騒がせなファンと何ら変わらない。その点僕は隣家で幼馴染。立場が違う!」
「なぁ・・斜向かい先の俺の家はどない扱いなんや?」
「社・・君は近所のただの友人だろう。進藤君の中で・・」
冷静さを取り戻した伊角はそう言い切った。
「違う!!俺達はヒカルちゃんと正式に交際する為に、調査と恋敵をハエ叩きで倒していただけだ。」
真剣に洪(ホン)はアキラに啖呵を切った。

その手始めに洪(ホン)は、韓国ラ−メンセットをヒカルに手渡した。
大好物のラ−メンだったので、益々洪(ホン)に対する評価がヒカル内で上昇した。
「本当にいいの!こんな高級そうなの・・」
「ああ・・俺が選んだものだ。本当は美食ハンタ−メ●チって言う者を此処に呼べば良かったんだが・・」
高(コ)は髪を整えながら、流し目でヒカルを見詰めていた。
既にヤラシイ雰囲気を隠さない韓国人。
だがアキラはそれしきで引き下がる人物ではなかった。

「ふ・・ふざけるな!進藤は餌付けされるような易い人間ではない。」
(でもされそうだぞ・・塔矢。っていうか口が挿めてないぞ。俺・・)
和谷なりに何かを言おうと頑張っているのだが、個性が頗る高い連中には標準の彼の意見は無視されるが落ちだった。
でも頑張って・・
「進藤さ・・ん。賞味期限が過ぎていないか見てやるよ。」

やっぱり和谷は間抜けていた!!


そして確かめると何と・・昨日だった。
その事を逆手にとって怒ったのは佐為だった。
「君達は可愛いヒカルを食中毒にするつもりか!温室の薔薇の如く丹念込めて育てた我が妹を〜!!成敗!!」
その号令で動いたのは加賀と岸本・・
水戸●門と暴れん●将軍のコンビネ−ションで、簀巻きにされる洪(ホン)と高(コ)。

辛くも日本の勝利となった。




久々のギャグテイスト。
シリアスばかり書いていたので、息抜きのつもりが変な展開に・・
そろそろ責任が持てなくなってきました。