『千飛んで一回のプロポ−ズ!』ACT:6<ホ−ム>




日が暮れて帰宅時間に差し掛かる。
夕暮れは時々人間の心を不安定にさせる。
しかしそんな理屈を超えて、いつも変な気分状態の者がいた。

「進藤!今日こそは僕とお手々繋いで自宅へ帰るべきだ!」
終了学活の時間またしても隣の愛する少女に迷惑をかけている者がいた。
体操着を補助鞄につめていたヒカルの手が止まる。
「何をほざいているんだ!!俺は藤崎さんと帰るんだからついて来るな!」
「でも隣の家なんだし・・彼女よりは遥かに近所だよ。」
確かに進藤家と塔矢家はお隣さん。
しかしヒカルはそれを知りつつもちゃんと断っている。
「嫌なものは嫌なの!あかりちゃん帰ろう・・」
そしてあかりの腕を絡め取り、教室から出て行った。
ぽつんと残されたアキラは・・
(一体何時になったら進藤は僕の思いを受け入れるんだ〜!!)
虚しく心の中で暴れていた。
そりゃまぁ激しく・・

あかりと無事に下校を果たしたヒカルは、玄関の靴が増えている事に気付いた。
ざっと数えて7人分のものが並んでおり、その6つが制靴だった。
「お母さんこれって何?」
「ヒカル・・6人もの貴方の男子学友が押し寄せてお母さんパニックよ。お陰で佐為お兄ちゃんを呼ぶ羽目になって・・」
「えっ・・お兄ちゃん帰っているの?」
嬉しそうに客間に行くと其処は満員電車のような有様だった。
「和谷君・・君ちょっと場所取り過ぎじゃないか?」
「伊角先輩・・風邪が移るからあっちに行って下さい!」
「加賀君・・奈瀬君に後で怒られないか?」
「いいって事よ。あいつも其処まで鬼じゃないって!」
「社・・どうして君まで此処にいるんだ?」
「塔矢それは言わんといて。幼稚園の頃からの付き合いやんか。」

(何このメンバ−・・俺に何のようで此処にいるんだ〜!!)


意味が解らない個性的な男子の集会に、腰が抜けたヒカルを後ろで支えたのは・・
「ヒカル・・大丈夫か?」
背が高くルックスに凡そ欠点がないヒカルの兄・・進藤佐為が妹を労う。
優しく抱き締め久しぶりの兄妹の触れ合いを喜ぶ。
しかしそれは2人だけが幸せで、他の男子は不幸だった。
「佐為さん・・お久しぶりですね。バイトはどうしたんですか?」
「アキラ君。今日はお休みだよ。」
いやに親しげに話すアキラに岸本は疑問を抱く。
「塔矢・・彼は一体・・」
「知らないんですか?進藤の兄で我校に在学していた【模擬荒らしの天才児】佐為さんですよ。」
その素性は岸本のみならず、伊角と和谷まで驚愕させた。
【模擬荒らしの天才児】は学園の中では知らない者はいない。
努力・根性を武器に挑む全国規模のテストに、すべて満点を弾き出し頂上を優雅に過ごしている。
しかし余りにもふざけた存在だったので、今では学校霊と同じ扱いだった。

たった一つのお膳を取り囲む様に1人の♀と、7人の♂が輪を作る。
「で、アキラ君は良いとして・・後の人達は何しに来たのかな?」
そう言って話題を円滑に運ぶ佐為。
「おい!佐為さん・・そりゃないだろう。昔なじみの加賀様にまで野暮な事を・・」
「何が昔なじみだ!【流離のガキ大将】が妹に過去何をしたのか未だ覚えているぞ!」
その一言が暗雲を呼んだ。
「塔矢君。通訳してくれ。【流離のガキ大将】とは・・一体。」
「伊角先輩。それはですね・・加賀先輩はむかし各町内の公園の権限をかけた戦いを全勝しているんです。」
「はぁ〜?何の為に・・」
「単なる暇つぶしですって事らしいです。其処でついた異名がこれらしいです。」
あんまり褒められる過去じゃないのは誰しもの感想で、佐為が友人と思いたくない気分を理解した・・が!!

「佐為さん・・ヒカルちゃんに加賀はんは何をしはったんですか?」
聞き捨てならない単語にいち早く反応した社に、佐為は眉を顰めてかなり不機嫌な面立ちで話し始めた。
手に汗を握りながら、明後日の方角を見ながら静かに話した。
「何も知らない別名【純白無知の天使】・・ヒカルに、キスをしたんだ。」

「「「「「え〜!!嘘だろう!!何だよそれって!!」」」」」


刺激も衝撃も強い加賀の仕出かした事に、男達はショックを隠せなかった。
口をぱくぱくさせる伊角&和谷。
汗をかいて動揺しまくりの岸本&社。
でも意外にも肝が据わっているのは塔矢だった。
しかし寛容ではなく、塔矢は復讐方法を考察していた。

(鎖ではクラ●カのパクリだし、忍者技では習得に時間が掛かる。それにサ●ケのようで嫌だし・・どうしたものか?)
何らかの逆襲が加賀に下されるのは時間の問題だった。
その当事者ヒカルは手元の、過去に買い溜めしたたまごっちの育成で大変だった。
それを側で加賀は面白そうに見ていた。
マイペ−スな集団の心は至ってばらばらであった。
しかし事態はそれだけでは済まなかった。

進藤家を黙って監視する怪しい影が近所の奥様に発見されたからだった。
その者は一体何者か?






人口密度が増える一方の話です。
加賀×ヒカルの展開になってしまうのか?実は分かりません。
最強の兄(?)佐為が何とか阻止しそうですので・・
しかしこれは本当にアキヒカ子かどうか怪しくなってきました。