『千飛んで一回のプロポ−ズ!』ACT:5<マスク>




【私立囲碁学園】の庭園での一時・・
整備された芝生に、噴水近くではDAK●RAのモデル像が景気良く水を発射していた。
其処のベンチで一人の女生徒と三人の野獣達が座っていた。

「進藤・・僕の弁当で好きなものをあげるよ。」
豪華なお重でおせち料理顔負けの食材が並ぶ塔矢アキラの弁当。
(明子おばさん・・ちょっと作り過ぎじゃないか?)
ちょっと貰うには萎える量にげっぷをしそうになるヒカル。
「進藤さん。喉が渇いたらこれを飲むといいよ。」
魔法瓶の冷たい麦茶を自分に注ぐ岸本薫。
しかし・・
(どうでもいいけどパン食にそれは合わなくないか?)
岸本の変わった趣向に疑問を抱く。
「しっ進藤・・それ美味いか?」
気の利いた台詞が出てこない和谷義高。
何とかしどろもどろになりながら会話をするが・・
(和谷くん。ほっぺにケチャップ付いているよ。)
非常に気疲れをしているヒカルに構わず男達の求愛は続く。

そして10分後各々が食べ終わり、心置きなくヒカルと接近しようとするが
「ああ・・伊角先輩。もう起きて大丈夫なんですか?」
足元がふらつきながら隣校舎に向かっている伊角にヒカルは目を向ける。
かなり大変そうだったので駆け寄ろうとしたが・・
「進藤!!僕が伊角先輩を無事送ってくるから此処で待ってて。」
男のポイントをあげる作戦に出たアキラに2人は遅れをとった。
(フライングだよ・・塔矢君。此処は僕も次の一手を考えなければ・・)
岸本の眼鏡が光った。
マッハ3の速さで岸本も伊角の側に駆け寄り
「駄目じゃないか。慎一郎君。保健室に戻ろう。」
体育系を馬鹿にするなと塔矢に牽制する。
しかしそのだしとされている伊角は・・
(何で男に囲まれているんだ?ただ僕は大切な女性(ひと)進藤さんが、額に残したハンカチを届けたいだけなのに・・)

魘されていた時少しだけ意識があった伊角は、ヒカルの母性を幸せ気分で味わっていた。
彼は3人柱の中でも良心派であったが、性欲までは組されていなかった。
(何とかこの2人を振り切って彼女に膝枕を要求するぞ!)
そしてじたばたしながら塔矢と岸本から離れた。
しかし到達手前で怖い不良マスクの兄ちゃんと伊角はぶつかった。
「何だ〜!お前俺が誰だと思ってぶつかったんだ?ええ・・」
絡まれ危機をむかえた伊角。
風邪で体力が無い上に、運も無い。
そんな状況を意外な者が助けた。
「加賀ガキ大将じゃないか。覚えてる?俺進藤ヒカル。」
そう言いながら加賀に擦り寄っているヒカルに周囲はびびった。
「あのお転婆ヒカルか?すっかり女らしくなりやがって・・この。」
懐かしそうに2人は世界を作ったが一瞬で壊れた。
「加賀生徒会長?業務に戻ってください!」
と生徒会会計-奈瀬明日美は加賀の耳を引っ張ってあっという間に連れ去った。
「岸本先輩?加賀生徒会長の正体はあれなんですか?」
「ああ・・そうだよ塔矢君。昼行灯な奴だから奈瀬君が調教している。」
何だか不安が後輩達の間で取り巻いたが
「進藤君・・これありがとう・・」
ドサクサにヒカルの元に辿り着いた伊角はハンカチを手渡す。
肩で息をしている伊角を心配したヒカルは
「保健室に本気で戻りませんか?先輩。凄い調子が悪そうで心配です。」
「なら・・少しだけ膝枕をしてくれないか?保健室は伏魔殿で落ち着かないんだ。」
「分かる気がします。芦原先生は可笑しい人っぽいので・・」
ごろっと寝そべる伊角をヒカルの膝が受け止めていた。いや正確には違い・・

「先輩俺で良ければ何時でもしてあげますよ。」
伏兵和谷が伊角の抜け駆けを凌いだ。
ごつごつの男の膝に伊角は感謝した訳がなく・・
「何だって君がそうしているんだ!俺は彼女にだな・・」
「そうは問屋が卸しませんよ。こう見えたって下心はビンビン感じているから。」
類友だから見抜ける素行。
向こう側では塔矢アキラと岸本薫が感心していた。
「彼は役立たずを返上したな。しかし伊角先輩まで進藤狙いだったなんて・・」
「今回は彼の活躍を認めざる得ない様な気がする。しかし慎一郎君って奴は・・」

「大体君は進藤君の何だ?そんなことをする権利が何所にある!」
「大いにありますよ。片思い歴2年を舐めないで下さい!」
小心者×2の戦いが繰り広げられていた。
しかしヒカルは聞いてはいなかった。
そう彼らは昼休みを超えて戦っていたから、ヒカルはとっくに教室に帰っていった。
そんな2人の側を一人のヘッドホン付の生徒が通り過ぎた。
「うぇへっへへ・・喧嘩はいけないぞ。おらは争いごとが嫌いだから・・」
仲裁をしながらユルさ爆発で話しかけてきた。
「君は隣のクラスの麻●君。どうしてこんな時間に登校しているんだ?」
「いやぁ面目ない。すっかり寝坊して・・おら。」

((しすぎだろう本気で!))


すっかり戦闘意欲を削がれた2人は教室に戻っていった。






だんだん暴走気味な展開です。
そろそろ人物紹介のコ−ナ−でも作らなければ混乱しそうですね。
前回登場予定だった加賀さんが書けて良かったと自分なりに思います。