『千飛んで一回のプロポ−ズ!』ACT:4<メロンパン>




馬鹿な討論は無駄に続いた。
そして迷宮入りの事件だと結論が出た。
だったらこんな事を話し合うなと言いたい気持ちで一杯だが、彼等にはそんな心が皆無だ。
お祭り好きな性格が何もかも帳消しにしてしまう。
これはそう言った輩が織り成す青春ドラマである。


「ヒカル・・ゴメン。会議で昼食が一緒に食べられない。」
あかりが拝むようにヒカルに謝る。
ヒカルはあかりと津田久美子と3人で何時も昼食をとる。
しかし季節の変わり目で久美子は風邪でダウンしていた。
だから本日ヒカルは一人での食事となるが・・
「安心してください!藤崎さん。僕が進藤さんと優雅にランチタイムと洒落込みますので・・」
やはり現れたハイエナ。
冷たい幼馴染に何時も蚊帳の外にされ、夏目と言う心広い学友と昼を過ごす羽目となっていた。
だからこんなチャンスは滅多にないと天国な気分だった。
しかしあかりは・・
(何が安心よ!不安ばかりが込み上げるこの苛立ちを何とかしてよ!)
大変ご立腹だった。
それを証明しているかの如く、まだ彼女の中でましとされている和谷に同席を依頼した。
でもしっかり『ヒカルに良からぬ事をした日には明日の太陽を拝めないから・・』と注釈付きで・・
隔して可愛い羊とお供の狼二匹のランチは始まった。

「俺購買だから待っててくれよ。二人とも・・」
そして食堂脇にある売店に駆け込んだ。
ひらひらとスカ−トが揺れて和谷はまた鼻血に悩まされた。
しきりに鼻を押さえる和谷にアキラは侮蔑の笑いを浮かべる。
「修行が足りないんじゃないか君。今からそんなに興奮していたら体が幾つあっても足りないよ。」
「五月蝿えよ塔矢。お前は平気なのか。」
「ああ・・僕は直接×××にそれは伝わり、●●●●に刺激が走り今はその状態。正に僕は男の鏡だね。」
和谷は凄く尊敬したのではなく、凄く離れたかった。
こいつと今だけは他人に同一視されたくなく、ヒカル抜きだったら逃走していた。
そしてヒカルのほうは・・
「おばちゃん俺コロッケパンとメロンパン宜しく。」
バ−ゲン真っ最中の売り場で戦闘中だった。
しかし割烹着の気前良さそうな中年女性が
「ごめんねヒカルちゃん。さっきメロンパンは売り切れたんだよ。」
「え〜!!嘘でしょう。何で・・」
「3つも買った者がいてね・・」
そしてヒカルにサンライズを手渡し謝っていた。
そんな不満なメニュ−で剥れる彼女に話しかける男子が居た。
「良かったら僕のメロンパンを食べるかい?2つ購入したからあげるよ。」
優しい言葉を掛けてくれたのは、岸本生徒副会長兼弓道部部長であった。
凡そ彼には不似合いな此処に現れた理由は何だろうと考えていた。
すると表情をよんだ様に、彼はメロンパン片手に
「気分転換だよ。別に不自然じゃないだろう?」
「はいそうです。でも少し驚いただけです。」
微笑みながら岸本に感謝をしてメロンパンを受け取る。
「俺・・いや私・・お返しは出来ませんよ良いんですか?」
「それなら一緒にご飯を食べないか?迷惑じゃなければ・・」
「良いですよ。大勢で食べた方が美味しいから・・」
どうして岸本が此処にいたのかなんて簡単だった。
彼は隠れ進藤好きだったからだ。
最近の男に媚びるタイプに、うんざりしていた彼に飛び込んだ自然体の少女。
何時も明るくただ前を見る彼女に岸本は好印象がある。
ただきっかけが無く、年下に惚れている事に抵抗もあったが・・
(やっと叶った。今日は接触記念日として手帳に記載しよう。)
胸ポケットの【進藤ヒカルとの愛の記録帳】は生徒手帳より貴重だった。
人生は果たしてそこまで上手くいくものなのだろうか?
その幸福間も無く同時に好敵手ともご対面となった。

「何所のどなたかと思えば岸本先輩ではないですか?下級生の輪に何用で?」
「これは塔矢君・・後輩らしからぬ毒舌痛み入ります。」
「いえいえどういたしまして。まさかとは思いますが同席希望ですか?」
「賢い後輩は理解が早くて助かるよ。」
「そんじゃそこらの進藤狙いの猛者を倒すには勘が冴えなくてはならないんで・・」
「それは大変だね。過労死しない程度に努力してくれたまえ。」
そして予想通りの口論が始まった。
はらはらとしながら和谷は見守っていた。
陰険VS策略家の戦い程心臓に悪いものは無い。
(進藤さん何とかしろよ・・俺は無力な一般人なんだから・・)
そして横目で見ると
「今週のJU●P面白い。作者が変わるだけでこんなに違うのか?」
別冊付録でいちいち感嘆していた。
和谷もヒカルにさりげなく近付くと激しい視線を正面の校舎から感じた。
(これは殺気!しかもかなり強烈な・・)
くわばらくわばらとその相手が藤崎さんで無い事を和谷は祈る。

果たしてその相手とは一体・・

それより平穏無事に4人は昼食時間を過ごせるのか疑問だ。







岸本×ヒカル?何でこうなったのか不思議です。
ところで皆さんはこの作品の主人公はヒカルだと思ってはいませんか?
多分アキラが主人公です・・多分・・(汗)
しかしたった一日の出来事を此処まで引っ張るのは至難の業です。