俺には混沌とした何かが欠けている。
運命を信じているなんて柄じゃない性格なのに、何かをずっと待って いた様な気がする。
俺と共に共同生活している地縛霊よりもっと心を締め付ける絶対的存在を・・
『搭矢アキラ』がその答えに一番近い処にいるのだろうか?
碁打ちという特殊な趣味を互いに共通のものとし、学校も同じだから名前を覚え る苦労は特にない。
でも如何せん反発を約束された相性の悪い性格だった。
俺は日常を愛しやり過ごすのに、あいつは目的を優先し努力していく違いすぎる ライフスタイルの持ち主だった。
嫌っても可笑しくないのに不思議と俺はアイツの視線が、アイツは俺の存在を 意味があるように感じている。
だから誰に見られても別に不自然じゃない公園で 棋譜並べをしているというのに、アイツが其処に居ただけで特別に思える。
だから話し掛けられても動揺し、視線を感じないように何か言いかけだった アイツの前から逃げ去ってしまった。
それを俺しか存在を確認できない霊体に言い訳をする位に・・
「佐為が言うように俺にも羽根があれば、アイツと俺にあるこのわだかまりが解消できるのかな?」
と言うと佐為は扇子を顎にあてがい微笑みながら
「そうですね。それにはまず今以上に友情を育みなさい。それからでも遅くはありません。」
そして触れないのに俺の頭に片手を持っていき、今度は笑わず真摯な表情で撫でながら
「私のように貴方達が後悔しか残せない生き方をしては、気が遠くなる位彷徨うことになりますから・・」
俺はその1000年の重みを語る佐為を、落日の中風に晒されながら切なく見つめていた。
はらりと落ちる落ち葉が肩を滑り・・
「佐為心配するな。これは俺達が何とかするから・・」
自分より一回り以上先に存在しているのに、自分に絶望して断った魂は逆に幼く彼を見せていた。
(こいつの事も受け止め、アイツの事も考える事が大雑把な俺に出来るんだろうか?)
そんな不安に襲われながらもゆっくりと佐為を促し、家に帰ると其処にただでさえ目立つ容姿の少年が自分を待っていた。
初冬近くの肌寒いこの気候の中に薄着で・・
「なぜ君はいつも僕から逃げる事を繰り返すんだ?」
怒りとも糾弾ともとれるアイツの剣幕に、習慣付いた逃避手段を考察するとそんな隙を与えずアイツは
「そんなに僕と言う人物は君に避けられて当然なんだろうか? 」
泣きそうに顔を歪め、心底から絞り出された悲鳴を迷うことなく俺にぶつけた。
どうしてこんなに狡いんだ君は!と責められている様で居心地が悪いが
「ペ−スが狂うんだ。お前と居るといつも・・」
言葉足らずな俺のシンプルすぎる言葉が紡がれ出た。
こんな会話ですら淡泊な俺と、くどいアイツを隔てているのに…
前途多難な関係を示唆する相違が、情け容赦なく俺達にのし掛かる。
数年前の短編小説です。
管理人が管理人になる前のもので、稚拙さばかりの作品です。
敬愛するサイト様との想い出の一品です。
『君と僕があるべき場所』と言う作品です。
凄く優しい作品をお作りになられ、私は日参していました。
そんな気持ちでこれの続きが浮かびました。
『羽根』を宜しかったら見て下さい。