逆説<パラドックス>〜魔のゲーム〜



僕の机に置いてある小さな箱。

それは僕…塔矢アキラにとって悪夢を呼び込む為の媒介だった。


棋院からの帰宅途中、普段なら決まって同じ帰路を使うのに、
その日は何故か可笑しかった。
決して手合いに負けたわけでも、体調が優れなかった訳でもなかった。
強いて言うなら、今日の手合いのメンバーに自分が恋焦がれている者が居なかった事。
それ以外思い当たる所がなかった。
その如何にもスラム街のような街角に、余り儲かっていない青空市場をしている中年が居た。
風呂敷の上に並べてあるのは個性的ではあるのだが、
どれもお金を叩いてまで購入したいとは思わない代物だった。
しかしその一つがどうしても気になった。


「お客さん。貴方はお目が高い。これはとある有名魔術商から納品した、
【ナイトメア】と呼ばれるゲームです。」
ぼさぼさな頭を掻きながら、アキラにそっと囁く。
「はぁ?しかし僕はゲームに興味は…。」
年頃の者が流行りのゲーム機などを親にせがむ頃、自分は囲碁に没頭してそれが遊戯だった。
だから世俗には全く疎かった。
「そうですか?本当に…しかしこれは不可能を可能にする効果があります。
私の話を少しでも聞いてもらったので、半額にしておきますよ。」
胡散臭い商売文句を言ってきた。
正気なら無視したいところだが、僕は正直何かに飢えていた。


僕の思い人…進藤ヒカル。


彼は僕を何時もどう思っているのだろうと…。
本人には決して聞けないが、もしかしてこのゲームは何かを導いてくれるのかも。
(不可能なこともこれがあれば実現出来る。気晴らしにやってみるか…。)
悪魔が僕に絡みついた。


そして家に帰って取扱説明書を確認した。
「パソコンでこのCD−ROMをインストールして、ダウンロードする。
再起動させて更新させ、それから付属のイヤリングをつける?
古風なパッケージの割に、現在文化の最先端っぽいんだな…。」
ぶつぶつと読み上げながら、しっかりと手順通り忠実に環境をつくる。


そして初期画面のアイコンをマウスでクリックしてみると…
『ようこそ…迷える旅人よ。反リアルな体験を希望しますか?』
二つの選択肢が出てきて、迷わずアキラはYESを選ぶ。
『それはどんな事を希望しますか?』
つらつらとテーマが載っていて、その中の一つ…【交情】を選ぶ。
『それでは何が貴方のお好みのシチュエーションですか?』
様々な場面(ステージ)が映し出されて、その中でアキラは街外れの公園を選ぶ。
『それに必要な道具はありますか?』
様々なSEXで相手を悦ばせられる小道具がリストにあがる。
(勿論バ●ブに鎖だろう…)
それをダブルクイックして転送した。


それから2分後…
『貴方の犯したい人物を画像で送ってください。』
勿論、その相手はヒカル以外ありえない。
しかしアキラはヒカルの写真がなく、そのサブメニューを開く。
そこにイメージのモンタージュを作成する項目があり、ヒカルを描く。
元気で可愛いのか、時々憂いの表情をみせる清楚系なのか…
その狭間のヒカルはアキラを大いに悩ませたが…
『終了です。それではイヤリングをしたまま眠って下さい。』
安眠効果があるBGMが流れて、アキラは布団を敷いて寝息を立てながら眠った。


そして次に目覚めた時、芝生の上で寝そべっていた。
此処は何処なんだ?っと思いながら、 何か変だと思いアキラは上体を起こすと…
「う…う…ん。」
何者かに唇を塞がれた。
執拗に口腔を嘗め回す舌と、自分を高める温かな蜜が混ざって来た。
その息苦しさと、異常な状況をどうにかしたく、手足をばたつかせるが徒労だった。
すぐさまアキラはその気持ち良さに、次第に溺れていった。
苦しさしか訴えなかった吐息に喘ぎが入る。
正体不明の者の成すがままを決め込んだのだが…
「気持ち良いのか…。塔矢…。」
その相手の声がアキラに冷や水を掛けた。


「ま…まさか…しん…どう…。」
言い終わらない先からアキラの纏っている服を、
超能力としか言えない力で粉砕した。
眉を動かしただけでのその行動がアキラに、得体のしれない恐怖を与えた。
自分は一糸纏わぬ裸で、そんな自分を不敵に見下ろしている男…
何より肌寒さより勝っている、これからの自分の身におきる事が…


「君は…進藤なのか?」
「う…ん?正確には違う存在。仮想空間生み出した立体映像。」
そう言うなり、手にはバイブレーションが握られていた。
スイッチが入り畝っている先っぽは、アキラを狂乱へ導く道具なのか?
そしてアキラの身体を宙に浮かせて、偽ヒカルはアキラの股間を覗く。


「まだ童貞と貞操を残す部分だ。これは悦ばせ甲斐がある。」
足をめいいっぱい開かれて、アキラの陰毛とそこにある雄の狭間を暴かれる。
自由にならない身体でもアキラにとってきついのに、それだけでは飽き足らず、
アキラの首に犬の様に首輪を嵌めて、その先の鎖を握り弄ぶ。
ジャラジャラと音が響き、アキラの羞恥を駆り立てる。
余りの仕打ちでそっぽ向いたアキラに…
「自慰をしてみろ。顔を逸らした罰だ。」
「何を言っている。当然じゃ…」
「余り機嫌を損ねない方が身の為だぞ。慣らしていない先からこれを挿入するぞ。」
ピンク色の物体(バイブ)をアキラの耳元まで寄せて、わざとその音を聞かせて確認させる。


そして渋々アキラは下半身に手を伸ばし、自分の茎を扱き始める。
仮想空間なのにリアルさが伝わり、生温かい感触が気持ち悪かった。
ゆっくりと時間を掛けていると…
「下手だな。お前。そんなんじゃ俺の本物は苦労するぞ。」
「な…何を…」
「自分を悦ばせる方法ですらそれでは、相手はお前に何も感じないぞ。」
そして馬鹿にした態度で腕を組む。


その横柄なマネをしているのが、愛する少年の顔。
幾度となく彼を抱きたくって、彼の隙を狙って襲おうとしたが、
自分を唯一の好敵手であり、気安い友人としている彼を、ぎりぎりで傷付けたくなく、
それを諦めていた。
しかし偽物であろうと、なんて官能的な彼なんだろう…
自分が抱きたいのか…抱かれたいのか…。
「あ…ぁぁあ…ん。」
張り詰めるようにペニスの興奮が早まり、アキラの視界が白くなった。
何も考えられない…
これが、マスターベージョン。
その肩で息をして呼吸荒いアキラを高見から見下ろし、『くすっ…』と微笑み、
ご褒美だと言わんばかりに、バイブに再びスイッチをいれて、
アキラのはしたない蕾にそれを突き入れた。
「やぁ…嫌だ!!痛い…くう…あああぁぁ…。」
貫通の準備すらして貰って居ないそこは、激しく痛みを伝え訴える。
焼け付くような鈍痛が脳天を駆け巡る。


それを知りながらも、舌舐めずりしながら抜き差しを止めない偽ヒカル。
自由にならない身体がもどかしい。
そこではなく自分のいちもつから、気持とは反して歓喜に震えた精液が滴り落ちた。
それを手に集めた偽ヒカルはあろう事か、アキラの顔に振りかけた。
べたべたの苦い自身の粘着質なそれを、自ら味わうこの辱めは…


口の端からそれは入り込み、自分の味覚を犯してゆく。
「げほっ…げほっ…。」
不味いそれを吐き出そうとしたが…
「愛している者の蜜もそんな味なんだよ。勘違いしていなかったか?
甘く美味しいものだと…」
それとこれとは違うと言いたいが、声が出せない。
「自分のセックス経験が、相手を屈服させ支配出来る近道だと…
それではご利用時間終了です。セーブしますか?」
事務的な事を偽ヒカルは言って、もうアキラに興味すらない無機質な表情に戻った。
取り敢えず腹が立ったが、セーブしてゲーム終了した。


生々しい疑似体験がアキラの精神を苛む。
本人が目覚めた時は、普通に朝焼けが輝いていた。
「何…このゲーム。僕を結局犯す為の娯楽道具だったのか…」
そう憤っていた時、はらりと紙が落ち、アキラはそれを拾う。


それは最後の説明文…

『これはイメージトレーニングのため、稀に自己を貶めてしまいますが、
あくまでプレイヤーの人体には影響は全くありません。
またこの経験を活かして下さると幸いです。』

それを見たアキラは、そのゲームをゴミ箱に捨て去った。
「余計な御世話だ。進藤の処女は自力で奪う。誰にもやらない…絶対に…。」
そしてその晩、アキラはヒカルを想って自慰をしていた。


無意識に…









以前のサイトで裏として置いていた、アキヒカ前提の偽ヒカアキ??
整理していたら出てきたので、今度は思い切って加筆修正して表にUP☆
きっとアキラはこの後は鬼畜に、本物のヒカルを陥れているかもしれません(笑)