君が太陽なら…僕は月…
泉のほとりで一筋の煙が立ち上る。
闇夜の人々の静寂の中、魑魅魍魎ともよべる妖怪が恰も我が物顔で跋扈する。
夜目がきく夜行性の動物は鳴りを潜める。
もちろん人はだれ一人出歩かない。
夜盗も怯むそんな中、薄布で暖をとって焚火にあたる集団がいた。
「加賀悟浄と、筒井八戒は眠っちゃったね。」
すやすやと寝息をたてている如何にも剛腕な加賀悟浄。
その彼の傍ら穏やかな好青年で優等生そうな、筒井八戒がまるで寄り添うように夢の世界へ…
それをくるくるとした明るい瞳で、嬉しそうに眺めているヒカル悟空。
自分の相棒ともよべる、如意棒の先で加賀悟浄の頬をつついて遊んでいた。
そんな周囲の不穏な空気をまるで感じていない者たち。
「アキラ三蔵。見てみろよ。こいつ全然起きないよ〜。」
しかしその中で唯一人間のアキラ三蔵だけは、常に邪気に中てらてていた。
僕は堪らなく癒して欲しい…。
でもだれでも良い訳じゃなく、目の前にいるヒカル悟空だけが僕が許した存在。
暴れん坊で抵抗ばかりする彼は僕に中々従順にならなかった。
(無理はないか…彼はまだ初な処女だったから…)
僕が施した彼の装飾品代わりの頭のリングの戒め。
僕の命じる事に逆らえば彼の妖気を酷く奪う…。
それが何時でも優越感を覚えるアイテム。
今日も彼に手を伸ばすと、彼は先程の楽しそうな表情を曇らせた。
まるでこれから何か恐ろしい事が待っているかの如く。
「アキラ三蔵…俺はお前の何なんだ…?」
唐突に訊かれたそれは僕を酷く動揺させた。
「藪から棒に何だ?君は…。」
在り来たりな台詞で誤魔化そうとした。
でも明らかに、加賀悟浄と筒井八戒にはこんな醜い感情を持ち合わせていない。
止め処なく蠢く支配欲…
「ごめん…でもたまにさぁ…お前の俺を見る瞳が怖いんだ。」
「怖いって。酷いな…君は。」
ちょっと僕がにじり寄ると、彼は逆に後ずさる。
彼の怯える姿が僕にははっきりとわかる。
しかし月明かりでの逆光で、僕の表情が確認できない彼は余計に恐怖を感じていた。
「俺もうくたくたなんだ。だから…。」
そんな甘え許せるものか…
「もう一度君は誰のものか教える必要がありそうだね。」
悪魔の囁きのようなアキラ三蔵の言葉は、聖人らしからぬもの…
あっという間にヒカル悟空の間合いに滑り込み、頭のリングを発動させる横笛を奏でる。
切なく幽玄なその音色とは間逆な、激しい拘束がヒカル悟空を襲う。
「止めてくれ!!痛い…痛いよう…。」
意識も絶え絶えに、アキラ三蔵が仕掛ける凌辱に打ち震える。
ヒカル悟空を組み敷いて、ただ性欲を滾らせてヒカル悟空を女のように扱う。
慣らさず寒空の真下で、狭い入り口をアキラ三蔵の欲望の塊と化したいちもつを何度も受け入れさせられる。
時折ヒカル悟空が拒絶ともとれる行動をしたら、至近距離で笛を聞かせて大人しくさせる。
傍でこれだけの情交が行われているのに、後の二人は助けるどころか起きる気配すらない。
「もういちど聞くよ。君は一体だれのものなんだ?」
支配者の余裕か…そんなアキラ三蔵にすっかり抵抗を諦めたヒカル悟空は…
「お前…だ…。」
それを聞いて満足したアキラ三蔵は、ヒカル悟空に御褒美と言わんばかりの自由を与える。
(本当はこんな方法で君を手に入れるべきじゃないのは分かっている。)
心底嫌われるの覚悟で激しく抱いては、そのあと常に過る後悔…
残るのは不器用な自分への嫌悪感。
しかし天竺までの旅はまだ始まったばかり…
(この旅の先に、君との未来が待っている事が僕の唯一のぞみ…)
そうして太陽が昇る。
旅の一日のはじまりを告げんがために…