『碁遊記』

第六話〜天災いや人災は忘れた頃にやってくる☆〜








その頃、アキラとヒカルの帰りを今や遅しと待つ伊角、和谷、社の元へ

季節外れともいえる真っ白なスーツ姿をきっちり決め込んで颯爽と? 現れた人物がいた。

アキラの兄 精次だ。



「ようこそ。わが城へ・・・弟の客人だと聞いているが、何か要望などあればなんなりと言いつけてくれ。」

三人はようやくまともに話が通じそうな精次の登場に安堵し 思っていた事を口々にもらした。

「俺たち 育ち盛りでさ 飯足りなかったんだ。」

和谷の隣で社がぼやく。

「いや、俺は量はすこしでええんやけど豆腐と湯葉とたけのこ ちゅうんがな・・・肉や魚もくいたかったわ。」

「ヒカル とアキラはご馳走を食べにいったって聞いたのに俺たち納得いかないんです。」

伊角の言い分に和谷と社が「もっともだ」といわんばかりにうなづく。



「あれは日本の京都からわざわざ仕入れさせたものだが客人の口には合わなかったか。

わかった今からすぐにデザートでも用意させよう。それでどうだ。」



デザートと聞いて三人の口元が綻んだ。

現金なものでヒカルやアキラのことなどすでに忘れている。

だが・・・緒方は「ただし・・・」と断りを入れてきた。





「俺も是非デザートはご一緒させてもらいたいんだがな。」

意味がわからず和谷がきょとんとする。

「もちろん。アキラのお兄さんもどうぞ。」

そう返したのは伊角だったがその途端伊角の顎は精次によって持ち上げられ値踏みされていた。

「うむ。君は悪くないな。」

「な・・・何をされます。」

「くくく・・・俺もアキラも男食家でね。美少年をデザートにするのがなによりも好物でね。

もっともアキラはあの前髪金髪坊やしか目に入らないようだが。」



伊角の顔が途端に青ざめる。

「デ デザートは遠慮します。」

一人部屋へと退散する伊角を呆然と見つめる和谷と社。

「えっと・・・」

「彼が駄目ならお前でも構わんがな。意外とかわいくて俺好みだ。」

精次が次にターゲットにしたのは、和谷だった。



「お 俺も遠慮します。」「も もちろん俺も あかんで。」

身の危険を感じた和谷と社が伊角の後を追いかけた。



緒方は白い煙を吐きながらにやりと笑みを浮かべた。





「気が向いたら俺の部屋へこい。かわいがってやるぞ。」





まったくとんだ兄弟である。