アキラ王子を料理したくって待ち望んでいた妖怪達。
しかし待望の彼は、ハニ−とルンルン旅行気分で帰ってくる気配が無い。
まぁ現実はそうでもないが…
仕方無しに怒りを抑えて、床に就いた。
和谷悟空がいきなり舌打ちして叫んだ。
「タッパ−をヒカル三蔵に預けておけば良かった!!」
無駄に100円均一の小道具は持ってはいない。
「無理ちゃうか?何時も俺らのまで掠め取っとる位やし・・絶対綺麗に食っとるわ。」
持たせたところで、ヒカル三蔵の気性から食べ残しはしない。
バイキングで間違いなく、制限時間以内にその店を赤字に追い込む食べっぷり。
回る寿司では天井まで皿が積まれて、 店員が梯子で枚数を数えていたのが武勇伝だと思っている。
「どうして俺に惚れてくれなかったんだ〜!!アキラ王子。」
最早意味不明な事を、アキラ自身に全く興味もないのに、その待遇差でどうにかなっている伊角八戒。
伊角八戒の問題発言で、他二名は『止めといた方が身の為だ』と一応助言をしたのは、仲間思いの表れか?
一方大胆にもキスをしてしまったアキラ王子は・・
(何て僕はおちょこちょいなんだ・・ヒカル三蔵は色気はあるが、
男気も腕っ節もあるからどうしよう。これ位大丈夫だよね…。)
ふくよかな唇を感じた幸福より、ばれた時の事が正直怖かった。
お仕置きされるのは勘弁だけど、お仕置きってヒカル三蔵にあれやこれやするの希望!!
とたんしまりのない顔をしていたが…
(でも・・あれは僕だけの心のアルバムに仕舞っておこう。)
いや…それが自分の身の危険を考えた最善の策だ。
そして一向に起きないヒカル三蔵の寝顔に微笑む。
寝相が悪いから寝返りが半端なく、布団が直ぐにずれてしまう彼のそれを整え・・
「こら・・風邪をひいちゃうぞ。君は僕にとって大切な男性(ひと)なんだから・・大事にしないと。」
その呟きをヒカルは夢心地で聞いていた。
しかし反応せず、だまってアキラの誠実さに甘えていた。
(だって満腹になったら超〜眠い。しかし寝顔をまじまじみられんのは気持ち良くないけど…。)
アキラの厚意に命を預け、仲間達との合流を望んでいた。
が・・!!
「アキラ王子・・ところで此処は一体何所なんだ?」
「僕の別荘地である軽井沢なんだけど・・」
何所の世界にヘリで他国を跨ぎ、他国で何事も無かったように出来るのだろうか。
しかも燃料は微妙な状態で・・どうやって・・
ぶらぶらと寄り道しかしてはいないが、数日経っていた。
「ああ・・ヘリは乗り捨てた。豪華客船に乗り換えて此処までタクシ−でやってきたんだよ。」
業務連絡の如く、説明をするアキラに青筋がたったヒカル三蔵。
「俺は天竺に行こうと思っていたんだ。これじゃ・・逆方向じゃんか!!」
ごもっともな怒りがアキラ王子の周辺に漂う。
しかし・・
「もしかして…君。胃袋のチャージのため僕を利用していたの?」
切なく言ったアキラ王子にヒカル三蔵は反省した。
のたれ死ぬところを助けてもらったのを少しだけ感謝して・・
「しゃ-ない。今回はデ−トしてやるか。お前と・・」
(えっ?これって放送事故じゃないよね?空耳でもないよね?僕起きているよね?)
今年の健康診断では、良好だった。聴力は異常なし!!。
その言葉でアキラ王子は嬉しさの余り、ヒカル三蔵に赤面しながら抱きついた。
はしゃぐときめきを処理出来ないまま・・
(僕は絶対君の気持ちをこの手に掴んでみせる。覚悟しろ。ヒカル三蔵。)