『碁遊記』

第三話〜小さな親切大きなお世話?〜








そしてアキラ王子の下心たっぷりの計画が発動した。

用意周到でヘリを手配し、3匹のお邪魔虫妖怪と愛するハニーを区分した。

ヒカル三蔵には広々としたヘリ、他を狭い安いヘリに乗せて、そのパイロットに耳元で指示を出していた。

何という出費だろうかと疑問視されるが、彼の親父である牛魔王が奇麗な売店の姉ちゃんにつられて購入した宝くじ。

それが何と!!一等の宝くじナンバーを当てた。

ヒカル三蔵に公私共連敗中だった彼にとっては、とんだ拾い物でありそれから贅沢な家庭となった。

それから息子も態度がでかくなり、自称王子様を名乗っている。

痛くも痒くもないはした金が、ハニーのお役にたてることを願っている健気なアキラ王子。

しかしとんだ食わせ者なヒカル三蔵は

(よだれが出てるって。ムードもへったくりもないお前に絶対堕ちてやるもんか!)

伊勢海老やタラバガニ。世界三大珍味…5つ星レストラン。

食い倒れツアー真っ青な展開に持ち込んだ。

ヒカル三蔵に腹八分目はありえない上、そこまで400人前食べなくては行き着かない。

ブラックホール級の胃袋を持っており、アキラ王子は付き合うだけで酔っていた。





「中々な食べっぷりで奢る僕も鼻が高いよ…」

ヒカル三蔵の満たされ続ける胃袋と反比例して、 引っ切り無しにむちゃくちゃな行き先に動かされ、燃料がなけなしになりつつあるヘリ。

操縦士の芦原執事も疲労の為か、タウリンたっぷりのリポビタンを片手に飲み始める。

アキラ王子に雇われてから、彼は薬局のお得意様となって、会員ポイントを貯め続けている。

いくら不況でもこんな俄仕込みのブルジョワのアキラ王子の付き人は、長い人生…全く選択を誤っていた。

(今一度とらばーゆを計画しなければ俺は過労死するなぁ〜)

そんな周囲の有り様でもヘリの中で、食べだしたら止まらないかっぱえびせんをバリバリ食べながら、 次の目的地までの間を持たしているヒカル三蔵(笑)

(一体何時になったら告白出来る甘い空間になるんだ?僕たちは…トホホ…)

花より団子なヒカル三蔵には、アキラ王子のこれは接待に他ならず、デートでは決してなかった。

疲れたようにアキラ王子が頭を悩ませていると…





「ところであいつら3人はいま何処にいるんだ?」

「ああ…彼らね。彼らは精進料理に舌を打っているよ…多分。」



今の今まですっかり存在すら忘却していた二人。

自分達とは別行動だったその頃の彼らは…





冴木料理長に山奥の別荘で手料理を振舞われていた。

しかし…

「不公平やんか!なんで雑食の人間(ヒカル三蔵)にええもん食わして、俺らはベジタリアンなんや!!」

アキラ王子の性格からして、ヒカル三蔵にはきっと贅沢な御馳走を食べさせているに違いない。

これは推測ではない。確定事項だ。

それに同感な和谷悟空は…

「本当だ!これじゃ手抜きの八戒の料理の方がましだっ!!」

少なくともこれは和谷悟空にとって、伊角八戒にたいする賛辞の…つもりだった。

「ごめんな(怒)手抜きで!材料の段階で誰かさん(和谷悟空)が食べるからこうなるんだ!!」

殺気立ち収集がつかなくなっていた。

伊角八戒は本当は多少なりとアキラ王子に感謝していた。

本来は飢え死に寸前の救世主。

それに匹敵するものだったが、乗り物酔いが実は激しいのに、詰め込まれたヘリ。

調子が悪いのに、こんなふうにぎゃあぎゃあ煩い連中との食事。

蓄積した意味不明なストレスが、いつもならクールな伊角八戒を極限状態にしていた。

冴木料理長はこう見えても、栄養士の資格持ち。

彼らの乱れ切った食事環境的を、そこはかとなく手助けしていた。

だが彼らは妖怪…

そう…見事に肉料理が見当たらない施しに、恩など皆無だった。



「「「何だって俺らがこんなめに遭うんだ!!」」」





三匹の雄叫びが、山荘の中で響き渡り、山登りツアーを満喫して近くを歩いていた通りすがりの高校生、三谷と岸本をびっくりさせていた。

危うし!アキラ王子!

この連中の瞳はマジだ!!