手折った僕だけの華〜第五話〜『セックス』



*このお話はフィクションです(当然)展開上R−18レベルになる可能性がありますので気を付けてお進み下さい。


引き返せない欲望。
それを胸に抱き進藤の足を舌で這う。
自分のざらつく舌の表面に感じ始めたヒカルは・・

「止めろ・・塔矢・・」
暴れて抵抗をし始めるがアキラは益々愛撫をきつくする。
段々意識が性感帯で機能し始めた時・・
「何て誘う肢体なんだ。君は・・」
最近は囲碁だけを繰り返している身体・・
以前のヒカルなら何所か擦り傷や、打ち身などがあった筈だった。
しかし全くそれらが見当たらない初雪のような足。
それに見惚れているが、アキラはブリ−フの中に手を差し入れた。
一番のヒカルの砦を侵略する。
生温かい体温が伝わり、それを鋭敏に伝える茎を握った。


「うっっ・・あ・・う。」
どうしようもない声が漏れる。
それが恥ずかしくて両手で口を塞ぐヒカルに・・
「きかせて・・君が僕に乱れる声を・・」
奥歯をがたがたとさせ、頭を左右に振り嫌がるヒカル。
それでもアキラはゆっくりと茎を扱き、自ら堪えられなくなるまで高めて行く。
今までそんな部分で追い詰められた事は無かった。
確かにマスタ−ベ−ションは経験がある。
あれは生理現象で行われる雄の性。
でも他人からそれを引き出される事ほど、苦痛で屈辱な事はない。
歯を食いしばり涙を零れさせるヒカル。
「でも簡単にはイカさない・・。僕の思いを成就させるまでは・・」
そして指でヒカルの尻をすべり、谷間を見つけようとしていた。


それの邪魔になっているヒカルの下着を剥ぎ取り、視線でも犯しながらそれは続いた。
ヒカルをうつ伏せにして、指を差し込んだ。
ぐちゃ・・ぴちゃ・・と入り口がこじ開けられた。
その元来排泄の為の場所を、逆に受け入れる為にされる行為に・・
「や・・だ。・・いや・・だ。」
手で覆われくぐもった声で制止を呼びかけるが
「止めない。今度は二本にしようか?」
一本でもめいいっぱいの其処にアキラの新たな指が加えられる。
その気持ち悪く、痛いだけのそれに既にヒカルは堪えられなくなっていた。
「・・い・・痛いよう・・ああ・・。」
狭いそこをアキラは幸せな気分で抜き差ししていた。
温かい最奥の果実。
それに愚かな愚者であるアキラは触れようとした。


何度もそれをしていると、必然的にもっと甘い所へ堕ちようと考える。
そしてアキラは自分のズボンのチャックを下ろして、前触れも無く入り口に宛がえた。
楔がヒカルを戦かせた。
「な・・にしてるんだよ。・・い・・や。」
しかし最後までヒカルは言わせて貰えず、アキラの暴行を受けた。
一気に突き入れられたアキラの一物は、ヒカルの内部を侵入した。
「あああ・・はっくっ・・ううん・・ああ・・」
腰を引き寄せられ打ち付けられる激しい熱・・
ヒカルの先走りの汁で汚れたソファ−に、新たなアキラの精液が染みを残す。
みしみしと軋む音が、この行為の臨場感へと変わっていた。


火傷の様に熱くなっているヒカルは・・
「ああ・・ん。あ・・」
薄れてゆく意識の中、アキラの熱が自分の中に果てた事を知る。
それと同時にヒカルもまた絶頂へ向かった。
白くなる脳天でありながら、それでもアキラは一心不乱にヒカルを解放しなかった。
雨音が鳴り終わるまで・・



「そう言えばそれが俺達の始まりだったよな。」
台所に立ちながらヒカルはぼやいていた。
手にはフライパンを握り、中心には卵が二つ並んでいた。
焦がさないように頑張っているヒカルの背中越しで
「そうだったね。あれからヒカルが違う意味で少しずつ僕を認めたんだった。」
そして皿を二枚テ−ブルに並べて
「いけねぇ・・塩入れるの忘れた。」
形にこだわり肝心な部分でしくじったヒカルに
「いいよ。僕は君が作ってくれる朝食だけで嬉しいんだから・・」
そして自分はサラダを手早く盛り付けて
「早く食べないと遅刻だよ。」
カレンダ−を見ながらそう言った。


アキラはそれからヒカルを調教した。
普通の性欲しか持たないヒカルに、自分だけを求める為に。
何度も罠を張り巡らせ、決して逃げられないように・・
そして快楽と言う鎖で雁字搦めに縛り、ヒカルはアキラと同棲した。
(君はそれからもますます色っぽくなった。)
項には昨晩つけたキスマ−クが、鮮やかに残っていた。
そしてしなやかな腕にも薄い鬱血の痕が・・
そんな事を強いられても、朝になると何事も無かったようにヒカルは振舞う。
たまにそれが互いの執着度の差だと思い、手酷く扱う事もある。
余りにも子ども染みた行動に呆れながらも、ヒカルはアキラを受け入れる。


「同棲の条件だアキラ。俺はお前に全てやる。その代わりお前の浮気は赦さない。」
簡単な事を引き合いに持ってきたヒカル。
それに微笑みながらも、アキラ自身どうやったらヒカルを脳髄から一瞬でも追い出せるのか分からない。
しかし形はどうであれヒカルと言う獲物を手に入れた事が、アキラを安定させていた。
「しないよ。それより僕としてはヒカルの方が心配だよ。」
「えっ・・」
「君は八方美人でおまけに魅力的だ。僕の目を盗んで快楽を植えつけられたら・・」
「ば・・ばか!俺はアキラに穴便所されるために来たんじゃない。俺はちゃんとアキラを見ている。」
赤面しながら言い放った。
そして直ぐに悲しそうに・・
「だって俺は無意識に佐為よりお前を選んでいた。ばかだからそれであいつは消えた。」
アキラはヒカルをある意味信じていなかった。
どうせ脅されて恐怖を解消する為に、自分と一緒にいる。
逃避していての結論だったのだろうと・・


でも違った。
ヒカルは最初っから掛け替えの無いものを犠牲にして、アキラと向き合っている。
失ってしまったものでさぞ苦しんでいただろう。
眠れない夜も、朝日に憂いを込めた涙を零していた時もあっただろう。
外見と違って頑固な一面があるヒカルは、誰にもそれを言えず悩んでいただろう。
だけど・・
「君はどうして僕を・・」
「俺も分からない。よく言うだろう?好いた惚れたは理屈がないと・・」
アキラは後悔していた。
自分とは全く違った場所で、ヒカルは自分に執着していた。
囲碁の手腕だけではなく、多分ゆっくりと塔矢アキラ本人を・・


「ならばもしその人が消えていなければ・・こうやっていられただろうか?」
一番卑怯な質問が口から出た。
あれがきっかけだったのか、ヒカルが孤独であった為からなのだろうか・・
アキラはそれが知りたかった。
「いなかったと思う。でもいずれはこうなっていた予感はする。」
アキラがこんなにも自分しか見ていなかったら・・
だからこそ不安だった。
「アキラが俺以外の囲碁の才能のある奴や、好みの女の子に心揺らされたらありえなかった。」
人間は関心のあるものと、その他とはっきり区分できるアキラ・・
最初はSai=佐為に固執したから自分を見ていた。
でも個人のヒカルは素通りされ、随分と傷付けられた。
だからアキラの自分に対する根源が分からない。


「ヒカル以外?無理だね。僕の全てを満たせる人物はあて間違わない。」
そして抱き寄せヒカルの不安に震える唇に口付けた。
甘くそして柔らかな部分がアキラを酔わせる。
ゆっくりと開かれた口に、アキラは容赦なく舌を差し入れる。
歯列を割り、ヒカルを次第に手懐ける。
日頃から受け入れているから、楽に呼吸が出来る様にアキラにあわせる。
(上手くなったね。流石僕を狂わせる唯一の雌(ヒカル)だ・・。)
でも涙はヒカルの瞳から零れた。
いくら慣れても更にアキラは貪欲にヒカルを蹂躙する。
まるでヒカルを食らうように・・


「今でも不安かい?こんな真似いくら金銭を積まれても君以外とは死んでも御免だ。」
糸を引いたように唾液の粘りが、互いをまだ繋いでいた。
赤い舌がそれを舐め取り、ヒカルの答えを待っていた。
「俺はお前の一番に何時も置いて欲しい。だから俺を捨てたら恨むぞ。」
精一杯に強がるヒカルにアキラは証拠を見せる。
「握ってみるかい?僕の感情が一番隠せない場所を・・」
下半身にヒカルの手を持って行き、自分のズボンの上を触らせる。
何所にそんな大きなものを仕舞っていたのか、はち切れている塊。
しかも熱い感触がヒカルを昂ぶらせる。
「これがお前の本音。本当は俺が・・」
「何だい?ヒカル・・」
(本当は俺がアキラの飼い主かも知れない。調教されているのは寧ろ・・)


チャックを下ろしてヒカルはそれを取り出した。
長くそして質量が増したそれはヒカル以外勃起しない役立たずな一物。
哀れな雄の証・・
それを繁々と見詰めヒカルは微笑した。
(俺が欲しいんだろう。でも簡単にはもう与えてやらない。俺にきちんといれさせて下さいとお願いするまでは・・)
何かがヒカルを優越感に駆り立てた。
確実に壊れている事に気付き始めた。
それは皮肉にもアキラが求めたヒカルを掻き消した。

彼の指で摘んでしまった清らかな花・・

何者にも支配されない凛とした者・・

どんな時でも他人を愛しむ心を・・


「ねぇ・・アキラ。俺が好き?」
冷え切った声がアキラに悟られないまま伝わる。
「ああ・・ヒカル。僕は君を永遠に愛している。」
熱い睦言がアキラの口から滑る。
でもヒカルはそれすら冷静に見ていた。
そして自らベッドに誘い・・
「なら・・俺が愛で受け止めてやる。お前が朽ち果てるまで・・」

その手が手招きアキラは逆らえなくなった。

そしてこの世で最も危険な薫りがアキラを奈落に落とした。