七夕企画「泡沫の逢瀬」 (『泡沫』第六話と七話の間のこぼれ話) 「塔矢・・俺を・・愛で殺してくれ・・」 そう言って苦しむ進藤を僕は抱き締めた。 彼は僕の無体を受け入れて、身も体もぼろぼろだった。 でも僕は本気で彼を大切にしたかった。 一番何を置いても、涙が滲む位愛している。 「進藤・・僕は愚かかも知れない。 手に入らないものを求めて身を焦がした彦星の宿命のように・・」 どんなに深く思いあっても、何時までも平行線の男女。 しかも運命は残酷に二人を容赦なく引き裂いた。 天の川を挟んで手を伸ばしてみるが、虚しいものだった。 「君は間違いなく、僕を認めない。あの二人より最悪だな。僕達は・・」 その呟きをヒカルは夢見心地で聞いていた。 (塔矢・・俺はお前と本当は歩きたい。 でも拒絶が俺の精一杯の愛情表現だから・・許してくれ・・) ヒカルとてアキラを愛している。 素直になれば楽な事も・・ でも耐え忍んだ織姫の心がヒカルにはあった。 溺れる愛よりも、たった一度の逢瀬に全てを捧げた事によって、 彼女もまた救われていた。 その哀愁が二人を包むが、 不思議と指を絡めて互いの体温を感じながらゆっくりと朝日を迎えた。 二人の溢れる思慕を肌で感じながら・・ |