『ハーモニー〜共鳴の記念日〜』



「そういえば。そろそろヒカルの誕生日ですね。」

そう呟いたのは緒方の恋人…藤原佐為。
互いは幼馴染の同級生。
色恋に不自由していた緒方と、あまり恋愛に興味がなかった佐為。
全くそのころは意識をする中でもなく、ただの親友だった。
しかし藤原家にやってきた遠縁の少年…進藤ヒカルを佐為が引き取り、
それを手助けしていた緒方が、いつしかヒカルに淡い恋心を抱き、
ヒカルを結果的に苦しめ、それを認められず彷徨っている中、
佐為の魅力を再確認して、緒方はヒカルへの失恋と佐為との新たな恋愛に現在は相成った。

唯でさえ物件的には広い家に、3人で暮らしていたのだが、
進藤ヒカルは塔矢行洋の隠し子で、その縁で塔矢アキラと同棲生活をし、
弟の慎一郎は楽器の営業に就職して、会社の社宅に移住した。
時々和谷を泊まらせていると、緒方だけは知っていた。
それで佐為の寂しさと家の防犯のために、緒方がちょくちょく訪れるようになった。


「ヒカルは何が欲しいのでしょうか?」
漸くヒカルの思い出の家をヒカルが去年塔矢行洋と佐為の助力で取り戻し、
今は平穏にアキラと住んでいる。
いろいろ不憫だったヒカルも軌道にのっていた。
「俺は久々にお前がフルートを奏でて、
料理を振る舞ったらそれだけでいいんじゃないかと思うが…。」
ある意味ヒカルにとってここは実家。
気兼ねなく来られるように、ここの家の鍵はヒカルのものとして与えている。
しかしそうは言ったもの、緒方はヒカルと顔を合わすのは正直複雑だ。
(まだ俺が怖い存在であるのは確かだろうし…俺は居ない方がいいだろう。)
酷く追い詰めて犯した。
暗い部屋の中、まるで貪るように求めた。
今はそうでない。随分反省している。
でもあの時の自分を否定はしたくない。
真剣にヒカルを愛していたのだから…


「そうですね。それがいいかも。それじゃ緒方君も料理手伝って下さいね。」
「無理だ。その日は…。」
教員である緒方は小テストの作成に追われていた。
気まずい事もだが実際は仕事なのだ。
「へぇ…私の頼みより優先するんだ。」
「いや。それはその…。」
「薄情だな。せっかく貴方にも食べさせてあげようと思ったのに。」
佐為の料理の腕は知っている。すごく美味しいし栄養価を考えたものだとも。
だからがっかりしていると…
「緒方君。これを読んでみて。」
そういって佐為は一通の手紙を緒方に手渡した。
薄い青の封筒の表書きは“藤原佐為様”
裏を引っ繰り返すと『塔矢ヒカル』と…
其処にはこう書かれていた。


【前略…佐為兄。
親を亡くして孤独だった俺は不幸だとずっとそう思っていた。
確かにそれは事実だしかわらないけど、それでも今があるんだ。
それは誰かが俺を支えてくれていたからなんだ。
その一番の存在は佐為兄や慎一郎兄だし…
そして殻に籠っていた俺を外へ連れ出してくれたのは、
佐為兄の親友の緒方先生なんだ。


俺の誕生日が親の命日だと聞いていたんだろうね。
次の日に音楽祭に連れて行ってくれた。
そこでやっと微かに音を感じたんだ。
みんながくれたものをお返しも出来ないけど、
俺はしっかりと立ち止まらず前をみるから。
だから緒方先生と幸せになって。


俺の家族佐為兄へ。】


随分精神的に強くなった彼の思いが綴られていた。
蹲ってただ無機質な世界に生きていた彼。
でももうこんなにも全て受け止め、嘗ての緒方がした事さえ許している。
傍に塔矢アキラが居るからだろう。


「ヒカルは貴方にこんなにも感謝している。
そんな貴方が不参加は無しですよ。そうだ。
あの子の誕生日の次の日…
その日なら何とか予定を空けておいて下さいな。
この家に塔矢アキラくんも招待してパーティーしましょう。」
早速スマホを鞄から取り出して、LINEでヒカルとアキラに連絡していた。


(すでに参加することになっているのか?俺は…
まあこいつが言い出したら引かないだろうし、降参して加わるか。)
結局根負けしてしまうのは緒方の方だろう。
これが惚れた弱みかと、何だか可笑しくなって笑みが零れた。
(もしかしたらまたそこからやり直せるかもな。それに…)
無意識だが多分佐為の対応は正解だろうと予測出来る。
きっとヒカルの誕生日当日はアキラと一緒に二人で過ごしたいだろう。
異母兄弟だけでなく、恋人同士なのだから尚更…

「おめでとうな。ヒカル…」
緒方の口から零れた言葉。
優しい者達の音に彼が包まれて欲しい。
あの日一緒に聞いた音楽を思い出し、心からヒカルの幸福を願っていた。






なかなかリアルが忙しく誕生祭開始に間に合わなかったです。
しかし遅れての参加です。
これは私のサイトで展開している『神曲』の番外編。
『ハーモニー』のオガサイ。
彼等のヒカルの誕生日への思い。
どこまでいってもヒカルに甘い二人です(笑)










サイト名 進藤ヒカル誕生祭11様
主催:大津拓己様
ヒカル至上主義なら応援するっきゃない。
当サイトは参加
2015年9月20日




サイト名 銀のKISEKI♪
管理人名 芹沢リオナ
このサイトに上の小説の彼らの物語があります。
興味がありましたら覗いて見て下さいね☆